京都府で秦蔵六の花器(花瓶)を買取しました。亡くなったおじい様が住んでいた家に住むことになり、押し入れの中を整理していたら、ずっしりと重い桐箱が見つかったとのことで、初めは価値のあるものかどうかを見てもらいたいというお話でした。おじい様に骨董集めの趣味があったことと、銘のある桐箱に入っているということで、それなりに価値のあるものなのではないかと思われたそうです。それでも、箱を開けてみたら、中身はところどころ金箔が剥げたようなくすんだ青銅製の花瓶だったため、一度はがっかりされたのだとか。
実は、秦蔵六の青銅器は、ところどころ金箔が剥げたようなデザインになっているのが特徴なのですが、そのことをご存知ない方も多く、大仏様のように、本来金箔張りだったものがすっかり剥げてしまったものと勘違いされることも少なくありません。今回のお客様にも、秦蔵六の花瓶の特徴であることをお話しし、安心していただきました。そのうえで高価買取が可能であることをお話しすると、骨董がお好きな方にお譲りしたいということになり、買取が成立しました。
☆秦蔵六とは
秦蔵六とは、青銅器製作を得意とする鋳金家です。江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した初代以降、代々秦蔵六という名前と共に鋳金の技が受け継がれてきました。現在は京都金属工芸協同組合理事長を務める6代目が秦蔵六として活躍しています。
初代秦蔵六は、江戸時代末期の文久年間、鉄瓶製作で知られていた龍文堂の門下に入り、鋳金の技術を身に付けました。その後独立しましたが、その技術が優れていたことは、孝明天皇の御印、15代将軍徳川慶喜の黄金印、明治天皇の天皇御璽、大日本国璽など、国の重要人物が使用する印の鋳造を任されたことからもうかがえます。
秦蔵六の鋳金は、高度な技術を必要とする「蝋型」という技法が用いられている点に特徴があります。とても手間がかかる技法で、まずは蝋で作品そっくりに型を作り、周りを土で覆った後加熱します。そうすることによって、中の蝋だけが溶け出すため、蝋が溶け出てできた空間が型になるのです。型に溶かした金属を流し込み、冷やし固めた後土を割ると、中から蝋で作ったのと同じ形、同じ模様の金属が出てくるという仕組みになっています。この方法を採ると、ひとつの型でひとつの作品しかできないため、秦蔵六の金属器は唯一無二の作品になるのです。
秦蔵六というと、銅器というイメージを持っている人も少なくありませんが、初代から現在の6代目まで、青銅に限らず錫や銀でも作品を作っているため、錫や銀の作品も多数残されています。
☆秦蔵六の花器(花瓶)
秦蔵六の花器(花瓶)は、ほとんどが青銅製です。鋳金によって作られており、背の高い一輪挿しタイプのものが中心です。今回買取した花器(花瓶)は、青銅製の塗金銅花器で、2代目の作品でした。秦蔵六は3代目以降のものなら、共箱に三世、四世などと書かれているため、初代、2代目と比較すると誰の作品かがわかりやすくなっていますが、2代目のものともなると、真贋の判断も含めてプロの目利きが必要です。3代目以降と比較すると、2代目の花器は残っている数が少ないため、大変貴重な作品と言えます。
塗金銅花器の特徴は、先にも述べた通り、青銅器の一輪挿しのところにところどころ金箔が施してあるところです。一見すると剥げ残ったかのようにも見えますが、絶妙なバランスで金が施されているため、程よい差し色になっています。独特の風情があるため、偽物か本物かは見る人が見ればわかります。
☆さいごに
秦蔵六は何世のものでも高価買取の対象ですし、秦蔵六に限らず、銅や銀、錫製の食器、花器なども買取をしています。日晃堂は金属製品の目利きにも自信があるため、高価買取も可能です。もし、価値があるかどうか知りたいというものがありましたら、お気軽にご相談ください。