石は、砂利道の砂利や建物の建築に使われる石材、さらには自然の風物として私たちの身近な存在ですが、通常は価値のあるものとは見なされません。
たとえば大正・昭和の文豪のひとりである山本有三は、名もなき庶民の人生を描く小説に『路傍の石』というタイトルを付けました。路傍(道ばた)に転がっている石のように、世間から見れば大きな価値があるわけではない人をそのように表現したのです。
しかしその一方で、日本をはじめ世界各国には、昔から「特定の石を愛でる」という文化がありました。それこそが、「鑑賞石・銘石」というものです。ここでは、そんな鑑賞石・銘石の歴史や文化についてまとめています。
鑑賞石・銘石とは?
地上や地中に存在する石を、単なる自然の風景のひとつとしてではなく“鑑賞”するに値する存在として考えるという「鑑賞石・銘石」の文化は、古くから存在しています。
日本の場合、古くは鎌倉時代に鑑賞石・銘石の文化が始まったといわれています。当時は、天皇や朝廷の貴族たち、また上級な武士たちの間でのみ通じる文化でした。
山のような形状の石を山景に見立てて楽しんだり、自然現象で菊の花や梅の花のような模様が付いた「菊花石」「梅花石」などがありました。
さらに、昭和時代になってからは大衆文化としても広まったという経緯があります。
特に1960年代に石ブームと呼ぶべき流行が起こり、鑑賞石や銘石の売買が盛んに行われ、特に見事なものは高値で取引されるようになりました。現在でも、鑑賞石・銘石のコレクターや愛好家は多く、価値のある石は高値で取引が行われています。
また石の中には、宝飾品や仏具の材料として使われ、高い価値を持つものも少なくありません。
透明度の高い二酸化ケイ素の結晶である水晶や、石英の内部で雲母などの微粒子が輝く砂金石などはその代表例といえます。
日本銘石協会の定義
一般社団法人の「日本銘石協会」は、世界中に無数に存在する石の中でもどのようなものを鑑賞石・銘石と呼ぶのかについての定義をまとめています。
いくつか例を挙げてみると、
・歴史的ないわれのある石
・希少性の高い石
・地質学および鉱物学的な魅力がある石
といったものがあります。
鑑賞石・銘石の買取について
すでに紹介したように、1960年代に大ブームが巻き起こって以降、一般の間でも鑑賞石・銘石の文化が盛んになり、高い価値を持つ石も多く見られるようになりました。
前述の菊花石や梅花石、また宝飾品の材料に使われることが多い水晶や砂金石をはじめ、さまざまな種類の石が価値を持つものとして扱われています。
鑑賞石・銘石の価値は、
・その石が何という種類の石なのか
・状態はどうであるか
といったことで決まります。
特に水晶、砂金石などを使った宝飾品や仏具の場合は状態の良しあしが重要なポイントとなるので、普段からしっかりとした保管・お手入れを行って良好な状態を保っておく必要があります。