今回は、東京都にお住いのお客様より買取させていただいた藤原雄の備前徳利について紹介します。未使用に近い美品で、共箱もきれいでしたので、大変高値で買取することができました。
☆藤原雄とは
藤原雄は、備前焼陶芸家で人間国宝に
なった父・藤原啓の長男として生まれました。明治大学文学部へ進み、一時はみすず書房の編集者への道を選びますが、病気で倒れた父をサポートするため故郷である岡山県に戻ります。その後は、父の助手として本格的に備前焼技法を学び陶芸家として歩み始めます。
1958年には、第5回日本伝統工芸展に出品した備前壷が入選。第7回現代日本陶芸展でも入選し、東京日本橋三越や岡山天満屋などで、自身初となる個展を開きます。1961年、スペインのバルセロナで開催された国際陶芸展では、グランプリを受賞し世界に名を知られる陶芸家として活躍しました。海外に広く備前焼を広めていくため、スペインやアメリカ、カナダなどで備前焼講座や個展を開催するなど海外活動を精力的に行います。1967年に独立し、同じ年に日本陶磁協会賞を受賞しました。
その特徴は備前の土色を生かしたすっきりとした器形に箆目や線彫、透かしや削ぎなどを使い、作為性を加えたものです。「無作為」の陶芸に力を尽くした父親とはまた違った魅力ある作品を完成させていきました。壷づくりを主として取り組み、岡山天満屋や東京日本橋高島屋で「百壷展」を開きます。展示された重量感のある豪快な壷は、新たな境地を開拓したともいわれています。その後も韓国国立現代美術館で「備前一千年、そして今、藤原雄の世界」展を開くなど備前焼の世界的普及のために尽力しました。1996年重要無形文化財保持者の認定を受け、1998年紫綬褒章受章しています。主な作品集には「藤原雄備前作陶集」や「藤原雄陶の譜:作陶生活40周年記念」などがあります。2001年に 多臓器不全のため69歳で亡くなっています。
☆藤原雄の備前徳利
藤原雄の備前徳利は、伝統ある備前焼に近代的感性を組み込んだおおらかで力強い作品が多いとされています。シンプルで明快、豪放さを感じさせる作品は、藤原雄が幼い頃からもつ視覚的なハンディキャップからくるものといえるでしょう。研ぎ澄まされた皮膚感覚の中、洗練されたフォルムの形成は父・啓の備前徳利とは異なるものです。「焼締め」によってつくられる備前焼本来の美しさはもちろんのこと、装飾性が少ないながらもシックな優美さを感じさせてくれます。今回買取させていただいた、藤原雄の備前徳利もシンプルで存在感のある味わい深いものです。藤原雄は徳利をはじめ、ぐい飲みなど多くの酒器を製作していますが、窯に入れるときに寝かせて入れたものは自然釉が横にかかっているといわれています。これは、徳利の中でも貴重なもので全盛期の作品とされるものです。買取させていただいた徳利もまた、横にかかった自然釉が美しく大変貴重なものといえるでしょう。
☆さいごに
徳利は現在ではあまり酒器として用いられることは少なくなりましたが、藤原雄の備前徳利は根強いファンやコレクターが多く、和室に飾るインテリアとして用いる方もいるため需要の高い焼き物です。また、人間国宝の師である父とは違った作風を確立させ、シンプル、明快、豪放な作品の数々は非常に貴重なものです。
そのため、使わなくなった藤原雄の備前徳利があれば日晃堂が買取らせていただきます。もちろん、状態の良し悪しによっても査定額は変わりますが、共箱や共布があり付属品などがきちんと残っていればより高値が付くでしょう。また、日晃堂であれば藤原雄の備前徳利に限らず備前焼なら高価買取が可能です。