今回は三大友禅のひとつ、「東京友禅」についてご紹介します。
東京友禅は「江戸友禅」と呼ばれることもある、高級織物の1つです。東京友禅は振袖など人気の高い着物で、有名作家のものであれば、買取市場で高価買取されることも珍しくはありません。
今回の日晃堂コラムは、そんな東京友禅について、着物初心者の方に役立つ内容をご紹介します。このコラムを読めば、「着物の豆知識」が増えますので、ぜひ最後までお付き合いください。
東京友禅(江戸友禅)とは
東京友禅(江戸友禅)とは、三大友禅(加賀友禅、京友禅、東京友禅)のひとつで、非常に有名な染め織物のことです。
1980年には「東京手描友禅」の名称で、東京の伝統工芸品に指定されています。京都の絵師、「宮崎友禅斎(みやざきゆうぜんざい)」が創始した友禅染めが、京の都から江戸へ伝わり広まったのが、東京友禅の始まりです。公家文化の元に生まれた華麗な京友禅に対し、江戸時代の幕府から、食べるものから着るものまで細かく規制されていた時代に作られた東京友禅は、モダンで上品なコンセプトで作られています。
そんな東京友禅の着物は、日本国内だけでなく海外からも高い評価を得ており、着物の買取市場でも人気があります。
【東京友禅】の特徴
東京の伝統工芸品として、世界中から注目を集めている東京友禅。
そんな東京友禅には、主に下記3つの特長があります。
- ・すべての工程を1人の作者が行う
- ・落ち着いた色合いや柄をしている
- ・東京手描友禅は全て手描き
東京友禅の特長に関して、下記より詳しくお伝えします。
すべての工程を1人の作家で行う
東京友禅の1つめの特徴は、1人の作家が下絵から仕上げまで、ほぼ全ての工程に関わっていることです(京友禅は分業制)。
これは時代背景も影響しています。友禅染といえば、高度経済成長時代は分業制が主流でしたが、日本の景気が低迷すると共に友禅染めを行う工房も縮小。規模の縮小と共に、ひとりの作家が多くの工程を一貫して行うことが主流となっていきました。東京友禅はそういった時代背景もあり、加賀友禅と同じように、工程のほとんどを1人の作家が担当しています(伏せ糊と蒸し、水洗だけは専門の業者に依頼します)。
そのため、東京友禅には作家の落款のついた作品が多く見られます(反対に分業制の京友禅には、落款がつくことはほとんどありません)。
落ち着いた色合いや柄をしている
東京友禅の2つめ特徴は、江戸の街の町人文化を背景とした、独自の色合いや柄などのデザインです。
江戸時代には「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」と呼ばれる、贅沢禁止令が出されていました。これは、庶民に贅沢を禁止することで倹約をさせ、余ったお金を国の財政に使おうとする幕府の発令です。
この発令の影響を受け、金糸を用いた刺繍や鹿の子絞りなどを用いた着物は、「町人には贅沢すぎる」という理由で禁止されました。色に関しても厳しい制限があり、紫や紅に通ずる染料や紅花を用いることは禁止で、茶色、ねずみ色、藍色など、町人は地味で目立たない色しか身につけられませんでした。紅色、橙色、桃色など、華やかな色はご法度だったわけです。
そんな禁止令に奮起して発展したのが、町人文化です。低い身分とされた色を絶妙に色をかけ合わせたり、濃淡を付けることで粋な色に生まれ変わらせるなど、アイデアを用いることで控えめながら斬新なデザインで生み出しました。他には、千鳥や磯の松、網干し、釣り船といった、江戸の風景を描いた柄行が多いのも東京友禅の特徴ですね。
東京友禅を代表するデザインには、「江戸解模様」「御所解風模様」「有職模様」などがあり、東京らしいモダンな上品さを感じさせると定評があります。
東京手描友禅は全て手描き
東京友禅の3つめの特徴は、すべて手描きで作られていることです。
“東京手描友禅“という別名があるように、型紙を使わずにすべて手描きで作られています。上述したように、東京友禅はほぼ全ての工程を1人の職人が担います。型紙を使わずに手描きで下絵から色挿し、染め付けに至るまでの工程を一人で行うため、作家の個性が顕著に出るのが特徴ですね。
作家はモチーフ選びから図案に落とし込む工程に最も時間を割き、下絵を描いていきます。長屋の風景、竹林、しゃれこうべなど、京友禅や加賀友禅では描かれることのない町人の暮らしぶりが描かれ、東京友禅が完成します。
東京手描友禅は、かっての奢侈禁止令によって色数やデザインなどが限られたことが逆に良いきっかけとなり、シンプルながらも江戸らしい粋、東京らしいモダンさが手描きによって魅力的に表現されています。
【東京友禅】の作家
ここからは東京友禅の有名な作家を3名、ご紹介いたします。
他にも多数の有名作家がおられますが、今回お伝えするのは以下の3名です。
- ・中村勝馬
- ・山田貢
- ・熊谷好博子
それぞれの作家詳細について、下記より詳しくお伝えします。
中村勝馬(なかむらかつま)
中村勝馬は人間国宝に認定されている、東京友禅の代表的な作家の1人です。
染織工芸作家の中村光哉が息子で、弟子に同じく重要無形文化財「友禅」保持者である山田貢がいます。中村勝馬は伝統的な友禅の技術を基礎にした、品格のある色調と現代的で優美な作風が特徴です。アシンメトリー(左右非対称)の図案、無線伏せ、叩き糊など、新しい技法を積極的に導入したことで知られている人物です。中村勝馬の着物の中でも、黒留袖は特に定評がありますね。
中村勝馬は「署名」や「落款」が一般的でなかった友禅の世界に、それらをいち早く取り入れたことでも有名です。
【中村勝馬】代表作:黒留袖「青雲」、友禅黒留袖「変り七宝」、友禅一越地訪問着「牡丹」など
山田貢(やまだみつぎ)
山田貢は人間国宝「中村勝馬」に14歳で師事した経験を持つ、東京友禅を代表する作家の1人です。
師である中村勝馬と同じく、重要無形文化財「友禅」保持者(人間国宝)に認定されています。伝統的な技法を駆使しつつ、大胆で力強い構図とそれに反するような、繊細で緻密さを兼ね備えた上品な色使いが特徴です。 山田貢は「東京芸術大学美術学部非常勤講師」を務め後進を指導したり、日本伝統工芸展の鑑査や審査委員を長年務めるなど、伝統工芸に尽力した功績が非常に大きい人物としても知られています。
【山田貢】代表作:友禅染着物「夕凪」、友禅訪問着「波」「宵凪」、友禅着物「山路」など
熊谷好博子(くまがいこうはくし)
熊谷好博子は東京友禅を代表する作家の1人で、若い頃に日本画家の「川端龍子」から日本画を学んだ経歴を持つ人物です。
“好博子“の名は、師の龍子から受けた雅号(がごう)になります。当初は東京友禅の伝統に実直に従うスタイルでしたが、日本画を東京友禅に用いたり、樹木の杢目や、葉の形、葉脈、鉱物の表面など、自然の形象をモチーフにして作品に取り入れるなど、独創的な作風を作り上げていきました。やがて、オリジナリティ溢れる「熊谷好博子の世界観」は高い評価を得るようになり、紺綬褒章、紫綬褒章、勲四等瑞宝章といった名誉ある賞を数々と受賞。大きな工房を持つことなく生涯を終えたため、熊谷好博子の作品数はそれほど多くはなく、希少価値も高くなっています。
【熊谷好博子】代表作:友禅訪問着「新篁」、「誰が袖図東京友禅袋帯」など
まとめ
今回の日晃堂コラムは、「東京友禅とは」というテーマでご紹介いたしました。
「東京友禅の特徴」や「東京友禅の作家」についてお伝えしましたが、本コラムを通じて東京友禅に関する知識が増えたのではないでしょうか。
日晃堂では、【東京友禅の買取】に力を入れております。特に今回ご紹介させていただいた、中村勝馬、山田貢、熊谷好博子、ほかに菅有鬼一など、有名作家の着物は高価買取に自信がございます。着物だけでなく、帯や和装小物も買取の対象ですので、ご自宅に眠らせたままのお品物があれば、ぜひ弊社までご連絡ください。
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