珊瑚の歴史と珊瑚の種類
珊瑚漁発祥の地は「地中海」と伝えられています。地中海では古代より珊瑚漁が行われており、地中海で採取されたベニサンゴは交易品として世界各地に運ばれ、それぞれの土地で装身具や祭祀具などに用いられました。現在でも世界各地で利用されており、産地から遙か遠く離れたチベットでも珍重されています。
宝石サンゴが日本にもたらされた時代は定かではありませんが、現存するものとしては正倉院に納められている珊瑚のビーズが最古の物です。これは、聖武天皇、光明皇后らが奈良東大寺の大仏開眼会(752年)で使用したとされる冠を飾っていたものと伝えられています。そして、明治時代になると日本で初めての珊瑚漁が高知県で始まりました。地中海産よりも大きく良質なものが取れることからヨーロッパで評判を呼び、高値で取引されました。やがて、日本の珊瑚はヨーロッパを始めとして世界各地で利用されるようになりました。
現在では一言に「珊瑚」といっても珊瑚の種類は数多く存在する為、珊瑚の種類すべてを細かく説明できませんので、代表的な珊瑚の種類を紹介します。
珊瑚の種類01:血赤珊瑚
血赤珊瑚は日本近海(小笠原列島・五島列島・奄美・沖縄・宮古島周辺)で特に土佐湾の水深100~300メートルの海底に棲息しています。
日本産・血赤珊瑚の原木は潮流が流れてくる方向に向けて手を広げるような形で海底にくっいているのが特徴で、そのまま引き上げられた原木は扇のような美しい形のまま飾る置物としても用いられています。実は、日本産・血赤珊瑚は裏面と表面があり、潮流が流れてくる表面側には珊瑚のポリプが付いていて穴跡が多くなりますが、反対側は滑らかな美しい面となっています。
血赤珊瑚の原木は根元付近で直径3センチくらいで高さも30センチくらいとあまり大きく成長せず、根元付近は岩に付いていたりしているため、血赤珊瑚の丸玉は枝部分の比較的よい部分を使用して作られます。血赤珊瑚の裏面には穴跡が多いこともあり、平均的な枝の太さで取れるのは8ミリ位の丸玉までとされていてます。
このため、10ミリ以上の綺麗な血赤珊瑚の丸玉は希少性が高く大変高価なものとなります。
「血赤珊瑚」のカラーグレード
本来、血赤珊瑚とは日本産や地中海産に限らず血の色のように赤黒い色(オックスブラッドとも呼ばれています)<カラーグレード4~5>の赤珊瑚のことを指します。
日本産の証「フ」とは
最高級品と称される日本産・血赤珊瑚の大きな特徴として、原木の中心に人間の骨のような白い色の「フ」があることが挙げられます。これは地中海産の赤珊瑚には見られません。
高価な血赤珊瑚の丸玉では出来るだけ「フ」を避けて丸玉を作らなくてはならないため「フ」の無い大きな10ミリ以上の丸玉は殆ど不可能と言われています。「フ」の少ない原木はとても希少で、あっても高価なものとなります。
天然珊瑚ならではの欠点
珊瑚は何気圧もある深海に生息していてその珊瑚が引き上げられることにより気圧から放たれた珊瑚の原木は「ヒ」と呼ばれるクラック(縦方向の筋目状のひび)ができます。
そのほかにも珊瑚は海中で成育しているため、フジツボ等の貝や甲冑類など色々なものが珊瑚に付着することがあります。その場合これらを巻き込みながら成長するため、加工の途中に巻き込まれたものが現れてきます。これが不純物となったり、現れたものが取れて、その部分に凹やキズなどが出来たりします。これも天然ゆえの証となります。
日本産の血赤珊瑚は特に希少性が高く、価値も相対的に高額となっていますが、日本産・血赤珊瑚は採れる量が非常に少なう事に加えて、土佐沖で採れた血赤珊瑚の8~9割が虫食い珊瑚の為、宝石珊瑚として加工できるものはごくわずかとなります。特にここ数年は、中国で日本産・血赤珊瑚の人気があり、日本で採れる血赤珊瑚はほぼ全ての原木が高値で台湾に輸出されています。このため質の良い血赤珊瑚はますます手に入りにくく高値になっています。
珊瑚の種類02:赤珊瑚
赤珊瑚は地中海沿岸の各国(イタリア・フランス・スペイン・チュニジア・アルジェリア・ユーゴ・ギリシャ)で採取されています。
赤珊瑚は業界でサルディとよばれていますが、これはイタリア半島西方の地中海にうかぶ島の名前(サルディニア)のことで昔から宝石珊瑚が採取される好魚場で名前がそのまま珊瑚の名前になっています。日本では、別名「胡渡り(こわたり)」とも呼ばれ、これは胡(ペルシャ)をはじめ西方から伝来したという意味でつけられた名前です。
地中海産の珊瑚は日本産と比較して浅いところ(水深50~200メートル)に棲息していて、日本産の赤珊瑚のような裏表がなく全体にポリプがあります。他の珊瑚に比べて柔らかく、内部にキズや内包物、薄い白濁などの欠点が潜んでいる場合が多くあり、廃棄率が高く歩留まりが悪いのが欠点と言えます。
品質的に比較的欠点の少ない珊瑚は水深80メートル以上のところから採取され、研磨したとき色調や艶の美しいものが得られます。
日本産の赤珊瑚との違い
日本産・血赤珊瑚のような白い色の「フ」が無く単一な色で、珊瑚自体の色ムラは少なく仕上がり面の色調は美しい赤色です。しかし、日本産・血赤珊瑚のような透明感がない為、日本産ほどの希少性もありません。そのため、日本産の血赤珊瑚に比べて安価な傾向にあり、日本の小売業者が販売する赤珊瑚の多くは地中海産のものが使用されています。
また、原木の形は日本産・血赤珊瑚の方が美しいとされています。
そして、日本産に比べて地中海産赤珊瑚は小ぶりなものがメインです。
地中海産の珊瑚の原木は高さが20~30センチ程度で枝の広がりも10~15センチ程度、枝の直径も10~15ミリと小さく、重さも100~150グラム程度のものがほとんどです。
そのため出来る丸玉は6ミリ玉前後で10ミリ以上の丸玉は地中海産では稀です。逆に「フ」がなく均一な色であるため、かなり小さなサイズの玉も作られています。これを活かした細い連を束ねたり、小さなパーツを編んだアクセサリーなどがあります。
珊瑚の種類03:桃珊瑚
桃珊瑚(モモサンゴ)は別名桃色珊瑚(モモイロサンゴ)とも呼ばれています。
桃珊瑚は赤に近い色から白に近いピンク色まで色調は幅広く、宝石珊瑚の中で最も大きく成長します。桃珊瑚の生息場所は血赤珊瑚と同じく日本近海(小笠原列島・五島列島・奄美・沖縄・宮古島周辺)で採取され、水深200~500メートルの場所に棲息しています。
宝石珊瑚の中で最も大きく成長前述しましたが、そのサイズ感はなんと高さと幅が1mを超える原木も珍しくなく、重さも40キロを超える桃色珊瑚も採れます。
彫刻作品にもなる桃珊瑚
珊瑚の中でも粘り気のある桃珊瑚は彫刻がしやすく、彫りの入った帯止めやブローチやペンダントなど、仏像などに使われています。とくに、大きさゆえに、昔から仏像をはじめとした置物になる大き目の彫刻物にも使われています。
幻の本ボケ珊瑚
桃珊瑚の中でも薄いピンク色の均一な色調の桃珊瑚は海外では「エンゼルスキン」、日本では「本ボケ」と呼ばれて高く評価されてきました。今ではほとんど採取されておらず「幻の珊瑚」とまでいわれています。だんだん色が濃くなると「マガイ」と呼ばれ(海外では「フェニックス」)、これも綺麗な薄桃色の珊瑚です。
「フ」や年輪状の筋目
また、桃珊瑚も血赤珊瑚と同じく骨軸の中心に白い色の「フ」があります。
近年の桃珊瑚の値段
ここ数年で原木の価格が高騰していました。イタリアへの輸出で日本の輸出目的の業者が無秩序に価格を吊り上げたためと言われており、日本の珊瑚職人が価格高騰で原木が手に入らず困っている側面がございます。
珊瑚の種類04:白珊瑚
白珊瑚は南シナ海、沖縄近海、五島列島から長崎沖、土佐湾など水深100~400メートルの海底に分布する種類です。
骨軸はすべて白色ですが、原木の表皮は柿色をしており、研磨されない状態の外見は桃珊瑚に似ています。白珊瑚の色は白色が基調ですが、淡いピンク色がわずかに混ざっている場合もございます。
色は純白から乳白色、セピア色までありますが、「純白の白珊瑚」となると希少性が高くなります。また、東シナ海で採取される白珊瑚には象牙色をしたものがありこれも珍重されています。
シナ海産の白珊瑚は殆ど流通しておらず、原木を持っている業者がときどきオークションに出品しますが、白珊瑚としては高値で取引されます。
珊瑚の種類05:深海珊瑚
深海珊瑚は宝石珊瑚の中でも際立って深い水深1,000メートルを超える深海底で採取されるのでこの名称が商品名になっています。
この珊瑚の発見は比較的あたらしく昭和39年にミッドウェー海域で発見されました。深海珊瑚の色と評価は白色とピンク色が混ざり合った珊瑚です。ピンク色が濃く色が単一なものほど高く評価されます。
圧力差によるひび割れ
深海珊瑚は深海から珊瑚が引き上げられることにより気圧から放たれた珊瑚の原木は「ヒ」と呼ばれるクラック(縦方向の筋目状のひび)が非常に多く見られます。
研磨の際のロスも多く、ほとんどのものは一律に研磨されて、安価な評価になります。
珊瑚の種類_6:黒珊瑚
他の宝石珊瑚とは異なり、六放珊瑚の一種で今では輸入が禁止されています。このため、現在流通している黒珊瑚は禁止される前に輸入されたものです。
黒珊瑚はその色合いからモーニングジュエリーとしても使われていて、特に丸玉のネックレスやイヤリングなどは喪服に合わせてもお使いいただけます。
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