今回は宮城県の上品な60代女性のお客様から島岡達三の方壺(白釉縄文象嵌流文方壺)を買取いたしました。少々傷はありましたが目立つ傷ではなく欠けている部分もない美品で、花瓶として使用するにもちょうど良い大きさの縄文象嵌の方壺でした。
☆島岡達三とは
島岡達三(1919年~2007年)は、東京都出身の陶芸家です。1954年益子に築窯をして、1964年には日本民芸館賞を受賞しました。1996年には、民芸陶器(縄文象嵌)で国指定の重要無形文化財保持者に認定されました。民芸陶器(縄文象嵌)は、島岡達三が考案した、作品に網目を施し違う色の土をはめ込む技法です。成形した作品が半乾きのうちに縄を転がし模様をつけ、縄模様のついた凹んだ部分に化粧土を塗り乾燥させます。乾燥後に表面を薄く削ることで凹んだ部分には化粧土が残り、平らだった部分は化粧土が剥がれて下地が現れます。縄の文様は生家での実体験と後年の縄文土器の復元で身に付けたといわれています。
島岡達三の作品は益子焼の中でも独創的で国内だけでなく海外からも高く評価されているオリジナリティにあふれたものが多く残されています。人気が高いためオークションなどでも島岡達三の作品は多数取引されています。
☆島岡達三の作品
島岡達三は縄文象嵌にろうそくで白い窓絵をつくりその中に赤絵で描画したり、象嵌に青や黒色の土を用いたりと他の技法と組合せた独創的な作品が多いのが特徴です。なかでも象嵌赤絵草花文角瓶はその特徴が表れていて二色の土を使用した縄文象嵌に丸い絵窓を作り赤絵を描いています。青い土にろうそくでつくった白い絵窓と赤絵が加わることにより鮮やかな作品に仕上がっています。4つの面はそれぞれ赤絵が違ったものなので、見る角度により異なった印象や雰囲気が楽しめます。
島岡達三は釉薬に「地釉(じぐすり)」を使用していました。地釉とは透明釉の中に、カオリンという陶器を焼く際の土をわずかに混ぜたものを全体に上掛けしてある釉薬のことで、しっとりした柔らかさが出ます。このしっとりとした柔らかさのある質感も島岡達三作品の特徴のひとつだといえます。また島岡達三は角瓶のみならず皿や茶碗、ぐい吞みなど日常的に使用できる陶器の作品も多く残しています。これらの皿や茶碗にも縄文象嵌や赤絵などの技法が取り入れられていて、地釉による柔らかさと縄文象嵌の力強さを兼ね備えた作品が多くみられます。
今回買取した方壺にも縄文象嵌の技法が用いられた独特な作品です。柔らかい質感を楽しみながら作品としてそのまま飾ることもできます。お客様はこちらの作品を花瓶として使用していたとのことで、方壺の絵柄に合わせて花を選び生けるという楽しみ方をしていたそうです。
島岡達三の作品は縄文象嵌と赤絵を組み合わせたものが多く特徴的であるため、陶器に関してあまり知識が無くても比較的わかりやすい作品になっています。陶印が非常にシンプルでカタカナの「タ」一文字だけなので、模様の一部に見える部分に陶印されていると一体化して分かりにくいかもしれません。釉薬のかかり方や見る角度によっては読みにくく傷や模様と間違えてしまうことがあるので、島岡達三の作品なのか見分けがつかないこともあるでしょう。不明な場合はぜひお問合せください。
☆さいごに
今回は島岡達三の縄文象嵌の方壺を買取しましたが、日晃堂では島岡達三だけでなく他の作者の作品も積極的に高価買取を行っています。また益子焼・唐津焼など陶器の皿や茶碗、ぐい吞みなどの高価買取も行っているので買取希望の作品がありましたらお気軽に問い合わせください。