今回は、佐賀県にお住まいのお客様から買取りした14代酒井田柿右衛門の酒器を紹介します。有田焼を好んで収集されていたお客様で、管理状態もよく美品でしたので、高価買取することができました。
☆14代酒井田柿右衛門とは
酒井田柿右衛門の始まりは、良質な陶土を求めて佐賀県有田町に移住した「酒井田円西」の息子「喜三右衛門」によるものです。「喜三右衛門」は父とともに白磁や磁器、陶器の製作を行いながら、17世紀前半には色絵磁器完成に成功します。そのことがきっかけで「酒井田柿右衛門」を名乗るようになりました。
初代は、濁手の地肌に赤色系上絵を焼き付ける作風を確立「柿右衛門様式」と呼ばれるようになります。ヨーロッパなどに多く輸出され、その人気の高さから模倣品も多く作られました。その後の2代目、3代目ともに高い陶芸技術で初代に匹敵する作品を制作しました。4代目までが初期柿右衛門、続く5代目から7代目までが中期柿右衛門、8代目から10代目の期間は後期柿右衛門とされています。その後、近代柿右衛門の時代に入りますが、12代目と13代目によって7代目以降中断してしまっていた濁手の復活を目指します。
そうした伝統のなか13代目の息子として誕生したのが、後の「14代酒井田柿右衛門」です。下積みを経験し、父と祖父がよみがえらせた濁手技法を学んでいきます。1982年に父の死を受け14代目を襲名、翌年にはアメリカでも初出品を果たします。「14代目柿右衛門展」は海外でも高い支持を受け、サンフランシスコ市長から名誉市民号を贈られるほどでした。
2001年には、重要無形文化財「色絵磁器」の人間国宝として認定され、大学で教鞭をとるなど後進の教育にも力を注ぎます。2013年5月に亡くなっていますが、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」に使われている洗面鉢は、遺作として広く知られています。著書に『余白の美:酒井田柿右衛門』(2004年)、『遺言:愛しき有田へ』(2015年)があります。
☆14代酒井田柿右衛門の酒器
14代酒井田柿右衛門の作品は、受け継いだ「濁手」の魅力を最大限に表現した焼き物です。独特な乳白色の地色が特徴で、赤色の釉薬とのコントラストが非常に美しく、大胆に使った余白が深みを感じさせてくれます。赤以外にも黄、緑、青、紫などを使い描いた草木は、柔和な印象が感じられます。同じ有田焼でも、緻密さを感じる鍋島焼、余白の少ない古九谷様式とは違った魅力を見せてくれます。
焼成、乾燥時の体積変化が大きため、長い柿右衛門の歴史の中で、一度は中断してしまうほど作製するのが困難だとされている濁手技法。難しいがゆえに完成した作品は、優美で奥深く貴重なものとして多くの愛好家に親しまれています。
今回買取させていただいた酒器は、共箱には14代柿右衛門とありますが、窯の職人によってつくられた酒器だと考えられます。徳利、ぐい呑ともに統一感がありながら、ひとつひとつ違う表情を楽しむことができるでしょう。目立った傷もなく、大切に扱われていたことがわかります。
☆さいごに
14代酒井田柿右衛門は人間国宝として認定された、有田焼の代表的な陶芸家です。製作が難しいとされる濁手を使い、美しい色絵磁器を多く製作してきました。完成させる焼き物の素晴らしさはもちろんのこと、17世紀ごろから続く「柿右衛門様式」の伝統を引き継ぎ、後進に伝え続けた功績は非常に大きなものです。そのため、つくられた作品はどれも価値の高いもので、日晃堂では高く買取しています。また14代酒井田柿右衛門の酒器に限らず、日晃堂では有田焼など多くの焼き物の高価買取が可能です。