石川県金沢市のお客様から吉田美統の珈琲碗の買取依頼があったので、ご訪問させていただきました。金襴手花唐草文の赤と緑です。九谷焼のコレクターだったお父様の遺品としてたくさんの作品を譲り受けたそうですが、保管スペースの関係で一部を売りに出すことにされたということです。とても大切に扱われていたことがうかがえる良好な保存状態でしたので、こちらとしても精一杯の価格を付けさせていただきました。大事な遺品を手放すことになったお客様に満足していただくことができました。
☆吉田美統とは
吉田美統は、1932年石川県小松市で九谷焼の作陶を行っている家庭に生まれました。そのため、高校在学中から作陶の技術を学び始め、卒業後は九谷焼の特徴的な技法「赤絵金襴手」を受け継ぎました。赤絵金襴手とは、背景を赤く塗った器に金で絵付けを施したものを言います。緻密な絵付に金の飾りを施したスタイルで、繊細さと華やかさを同時に味わえる点が特徴です。
釉裏金彩の技法を確立した竹田有恒の作品に出会ったことをきっかけに自らも釉裏金彩の技法を取り入れるようになります。釉裏金彩とは、釉薬よりも下の層に金箔が置く技法です。そのため、従来の焼き上げてから金を塗る方法と比べて上品で柔らかみのある作品に仕上がります。また、金箔が釉薬の下の層にあるため、使っているうちに金箔がはがれてしまうのも防げます。吉田美統の釉裏金彩は、特に厚みの違う2種類の金箔を使い分けて、葉の葉脈や蝶の羽の模様も細密に描いている点が優れています。
しかも、吉田美統の作品には色使いにも特徴があります。金箔の他に複数の色を用いた豪華絢爛な九谷焼が多い中、吉田美統の作品は背景色と金だけのシンプルな色使いが中心です。色のグラデーションや金箔の厚さの違いだけで奥行きある作品に仕上げる技術は吉田美統ならではと言えます。
1970年代から作品の評価が高まり始め、1974年の日本伝統工芸展入選以降、国内で数々の賞を受賞。2001年には釉裏金彩の高い技術が評価され、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。そして、同じく2001年、紫綬褒章も受章しています。現在は、財団法人石川県美術文化協会理事および小松美術作家協会顧問として、後進の指導にもあたっています。
☆吉田美統の珈琲碗
吉田美統は1962年に、特別修習生として武蔵野美術短期大学で工業デザインも学んでいるため、伝統的な九谷焼の技法と現代的なデザインを融合させた洋風の作品にもチャレンジしています。今回買取した珈琲碗もそのような作品のひとつです。
吉田美統の代名詞ともいえる釉裏金彩の技法を用いた作品には花瓶や飾り皿が多く、今回買取した珈琲碗やぐい吞、香炉など小ぶりな作品は、金襴手の技法が用いられています。しかし、金襴手でも吉田美統の色使いのシンプルさは釉裏金彩を用いた作品と同じです。金襴手花唐草文は、緑または赤を背景色に繊細なタッチで金の花唐草の模様を描いた作品で、緑や赤に金を施しているにも関わらず派手になりすぎていないところが魅力です。
☆さいごに
人間国宝・吉田美統の作品は、珈琲碗に限らず高価買取の対象です。また吉田美統の作品だけでなく、九谷焼は国内外問わず広く人気があるため、高価で買取の可能性は十分にあります。もし手元に九谷焼の食器や花瓶があるという方は、どのくらいの価値があるものなのか、一度確認してみてもよいかもしれません。日晃堂なら高価買取の実績もありますから、九谷焼をはじめとした陶器を売りたいという方はぜひご相談ください。