古来より日本人の暮らし・祭り・芸能と共に育まれてきた「和楽器」。その音色は、私たちの心に深く響き、懐かしさや安らぎ、時には高揚感をもたらします。
一口に和楽器と言っても、その種類は驚くほど多様です。弦を爪で弾いて音を出すもの、息を吹き込んで音を出すもの、そして打って音を出すものなど、様々な方法で豊かな音楽を奏でます。
たとえば、優雅な音色で知られる箏(こと)は、長い胴に張られた弦を爪で弾いての演奏。一方、勇壮な太鼓は、力強い響きで祭りを盛り上げ、聞く人の心を奮い立たせます。また、尺八は、竹の管に息を吹き込み、独特の音色で深い精神世界を表現します。
このように、和楽器はそれぞれ異なる魅力と歴史を持っているのです。この記事では、多種多様な和楽器の世界を、分かりやすく解説します。
和楽器の世界へようこそ!種類を一覧で紹介
和楽器は、その音の出し方によって大きく3つの種類に分けられます。
体を叩くように音を出す「打楽器」、息を吹き込んで音を出す「管楽器」、そして弦を振動させて音を出す「弦楽器」です。それぞれの分類から、代表的な楽器をいくつか紹介しましょう。
1.打楽器:リズムを刻み、場を盛り上げる
「太鼓(たいこ)」
和楽器を代表する存在。大きく響く低音から、小気味良い高音まで、様々な音色を奏でます。お祭りや舞台など、様々な場面で活躍します。
「小鼓(こつづみ)」
小鼓(こづつみ)は砂時計形の小さな太鼓で、肩ひものような紐で胴を肩寄りに固定し、片手(右手)で叩いて音を出します。能や歌舞伎などの伝統芸能で、独特の掛け声とともに演奏されます。
「鉦鼓(しょうこ)」
金属製の円盤を叩いて音を出します。寺院で使われることが多く、澄んだ音が響き渡ります。
2. 管楽器:息を吹き込み、メロディーを奏でる
「尺八(しゃくはち)」
竹で作られた縦笛で、独特の音色と表現力が魅力です。静寂の中に響く音色は、聞く人の心を落ち着かせます。
「篠笛(しのぶえ)」
竹製の横笛で、お祭りや民謡など、様々な場面で親しまれています。明るく軽やかな音色が特徴です。
「笙(しょう)」
17本の竹の管を束ねた楽器で、息を吸っても吐いても音が出ます。複数の音を同時に出すことができ、幻想的な響きを生み出します。
3. 弦楽器:弦の振動が、繊細な音色を生み出す
「箏(こと)」
長い胴に張られた13本の弦を、爪で弾いて演奏します。優雅で美しい音色は、古くから多くの人々に愛されてきました。
「三味線(しゃみせん)」
3本の弦を撥(ばち)で弾いて演奏します。歌舞伎や人形浄瑠璃など、様々な場面で活躍し、力強い音色から繊細な表現まで可能です。
「琵琶(びわ)」
4~5本の弦をヘラ状の撥でかき鳴らして演奏します。哀愁を帯びた音色で弾き語りに用いられ、独特の世界観を作り出します。
これらの楽器は、和楽器のほんの一部です。次の章からは、さらに詳しく個々の楽器を見ていきましょう。
【打楽器】大地を揺るがす、魂の響き
打楽器は、叩く・振る・擦るなど、直接的な打撃によって音を出す楽器の総称です。その起源は非常に古く、人類が最初に手にした楽器のひとつともいわれています。
素材や形状、奏法の違いによって、実に多様な音色を生み出し、リズムを刻むだけでなく場の雰囲気を作り、感情を表現する力を持っています。
大きく分けて、楽器自体が振動して音を出す「体鳴楽器」と、張られた膜が振動して音を出す「膜鳴楽器」があります。
鉦鼓(しょうこ)- 荘厳な響きで場を清める
鉦鼓(しょうこ)は雅楽に用いられる金属製の円盤状の体鳴楽器で、撞木(しゅもく)で叩くことで澄んだ音色を出します。
寺院の法要では、これと似た当たり鉦(あたりがね)などが用いられることもありますが、狭義の「鉦鼓(しょうこ)」は雅楽の舞台で使われることが中心です。
鈴(すず)- 神聖な音色で神々を招く
金属製の小さな球の中に、さらに小さな玉が入っており、振ると「チリンチリン」という軽やかで澄んだ音が鳴ります。この音は、古くから神聖なものとされ、神様を招き、邪気を払うと信じられてきました。
巫女が舞う際に使う神楽鈴(かぐらすず)は、その代表的な例です。また、お守りや魔除けとして、日常生活の中でも広く用いられています。その美しい音色は、人の心を癒し、清らかな気持ちにさせてくれます。
鰐口(わにぐち)- 寺院に響き渡る重厚な音
金属製の、鰐の口のような形をした体鳴楽器で、上部に吊るされた紐を引いて、下部の撞木を打ち付けて音を出します。
その名の通り、鰐が口を開けたような形状が特徴的です。寺院の軒先に吊るされ、参拝者が鳴らすことで、仏様への祈りを伝えます。
その「ゴーン」という重厚な響きは、遠くまで響き渡り、人々の信仰心を呼び覚ますとともに、悪霊を退散させるともいわれています。
木魚(もくぎょ)- 読経を支える、心落ち着く響き
木製の、魚の形をした体鳴楽器で、内部は空洞になっています。魚の鱗を模した彫刻が施されているものが多く、その見た目も特徴的です。
専用の撥(ばち)で叩くと、「ポクポク」という独特の音が響きます。この音は、読経のリズムを整え、僧侶や参拝者の集中力を高める効果があるともいわれています。
また、木魚は大きさによって音の高さが異なり、様々な種類の木魚が存在しています。
団扇太鼓(うちわだいこ)- 祭りを盛り上げる、軽快なリズム
その名の通り、団扇(うちわ)のような形をした太鼓で、片面に革が張られています。木枠に革を張ったシンプルな構造で、手に持って叩いたり、台に置いて叩いたりして演奏する楽器です。
祭囃子(まつりばやし)や盆踊りなど、賑やかな場面で用いられ、軽快なリズムで場を盛り上げます。子どもでも扱いやすい楽器であり、地域のお祭りなどで、子どもたちが楽しそうに叩いている姿が見られます。
笏拍子(しゃくびょうし)- 雅楽を彩る、優雅な響き
笏拍子は、2枚の細長い木の板(笏)を打ち合わせて音を出す体鳴楽器です。
堅い木材で作られており、「シャッ」という乾いた音が特徴といえます。主に神楽や雅楽の朗詠・催馬楽などで用いられ、曲の区切りや拍子を示す役割を果たします。
いわゆる管弦(管楽器・弦楽器・打楽器の合奏)中心の雅楽編成には含まれない場合が多いですが、広義には雅楽の一環として扱われています。
打ち合わせる強さや回数、角度などを微妙に変化させることで、様々な表現が可能であり、熟練した演奏者によって、楽曲に豊かな表情が加えられます。
拍子木(ひょうしぎ)- 舞台を彩る、緊張感を生む音
2本の堅い木の棒(通常は樫の木)を打ち合わせて、「カンッ」という甲高い音を出す体鳴楽器です。歌舞伎や落語、相撲など、日本の伝統芸能や行事において、様々な場面で用いられます。
場面転換や、登場人物の出入りなどを知らせる効果音として、また、火の用心の呼びかけなど、注意喚起の合図で使われる和楽器として有名です。その鋭い音は、聞く人の注意を引きつけ、緊張感を高める効果があります。
太鼓(たいこ)- 日本人の魂を揺さぶる、力強い響き
木製の胴に革を張った膜鳴楽器で、和楽器を代表する存在です。太鼓の起源ははっきりとは分かっていませんが、縄文時代の遺跡からは、打楽器に転用されていた可能性のある土器も見つかっています。
太鼓は、単なる楽器としてだけでなく、古来より神事や祭礼、戦場での合図など、様々な場面で用いられ、日本人の生活に深く根付いてきました。
大きさや形状、革の種類、バチの種類などによって、実に多様な音色を出すことができ、その力強い響きは、聞く人の心を揺さぶり、魂を鼓舞します。
長胴太鼓(ながどうだいこ)- 祭りを象徴する、迫力満点の音
胴の長い太鼓で、一般的に「太鼓」と呼ばれるものは、この長胴太鼓を指すことがほとんどです。欅(けやき)などの木材をくり抜いて作られた胴に、牛や馬の革を張って作られます。
祭りの際に、山車(だし)に乗せられたり、担がれたりして演奏され、その「ドーン」という迫力ある音色は祭りを大いに盛り上げ、人々を熱狂させます。太鼓の大きさや、打ち手の技術によって、様々な音色やリズムを表現できます。
締太鼓(しめだいこ)- 繊細な表現も可能な、万能太鼓
胴の両面に張られた革を、紐やボルトで締め付けて音を調整する太鼓です。この締め付け具合によって、音の高さを自由に変えられ、幅広い音色を表現できます。
そのため、能楽や歌舞伎、民謡、長唄など、様々なジャンルの音楽で用いられ、繊細な表現から力強い表現まで、幅広い役割を担っています。比較的軽量で持ち運びやすいため、屋外での演奏にも適している和楽器です。
大太鼓(おおだいこ)- 圧倒的な存在感、大地の響き
非常に大きな太鼓で、直径が1メートルを超えるものも珍しくありません。その巨大な胴から放たれる音は、まさに「ドーン」と大地を揺るがすような迫力が魅力です。
寺院の法要や、特別な儀式、大規模なイベントなどで用いられ、その存在感は場を厳粛な雰囲気に包み込むほど。熟練した打ち手によって打ち鳴らされる大太鼓の音は、人々の心に深く響き、感動を与えます。
小鼓(こつづみ)- 能楽を彩る、繊細で優美な音色
砂時計のような形をした小さな太鼓で、桜の木で作られた胴に、馬の革が張られています。肩に掛けて、片手で打ち、「ポン」「プ」という、繊細で柔らかい音色が特徴的です。
能楽の囃子(はやし)に用いられ、独特の掛け声とともに演奏されます。打ち方や革の湿り具合などによって音色が微妙に変化し、熟練した演奏者によって、能の舞台に深みと奥行きを与える和楽器です。
大鼓(おおつづみ)- 能楽に欠かせない、力強くも華やかな響き
小鼓よりも一回り大きく、桜の木で作られた胴に、馬の革が張られています。
左腰や左太ももの上に置いて構え、右手で打つのが能楽での一般的なスタイルです。小鼓よりも甲高く鋭い「カッ」や「パッ」という高く乾いた音色が特徴といえるでしょう。
能楽の囃子に用いられ、小鼓と対になって演奏されることが多い楽器です。小鼓との掛け合いや、謡(うたい)との調和によって、能の舞台をドラマチックに盛り上げます。
羯鼓(かっこ)- 雅楽をリードする、リズミカルな音
横長の胴の両面に革を張り、細いバチで打ちます。雅楽の演奏に用いられ、主にリズムを刻む役割を担う和楽器です。
桴(ばち)は細く、先の部分に動物の骨や角の玉を付けたものを用います。「カラカラ」「コロコロ」といった軽快でリズミカルな音色が特徴で、楽曲全体のテンポを決め、演奏をリードする重要な役割を果たします。
三ノ鼓(さんのつづみ)- 雅楽に深みを与える、独特な音色
羯鼓よりもやや大きく、胴の形も異なり、より丸みを帯びた形状をしています。雅楽の演奏に用いられ、羯鼓とともにリズムを刻みますが、より低い音で、楽曲に深みと奥行きを与えます。
羯鼓と三ノ鼓の組み合わせによって、雅楽のリズムはより複雑で豊かになり、楽曲に独特の雰囲気をもたらします。
楽太鼓(がくだいこ)- 雅楽を支える、荘厳な響き
大きな枠に吊るされた太鼓で、2本の太いバチで打ちます。雅楽の演奏に用いられ、楽曲全体を支える、荘厳な響きを生み出す和楽器です。
低い音で「ドーン」と長く響いて楽曲に重厚感と安定感を与えることで、他の楽器の音を引き立て、雅楽全体の調和を保つ役割も担っています。
【管楽器】風に乗せて、心を奏でる
管楽器は、息を吹き込むことによって空気を振動させ、音を出す楽器の総称です。管の長さや太さ、材質、吹き込み口の形などによって、様々な音色を生み出します。
大きく分けて、横に構えて吹く「横笛」と、縦に構えて吹く「縦笛」、そしてそれ以外の「その他の管楽器」に分類できます。
能管(のうかん)- 能楽の幽玄な世界を表現する
能楽に用いられる横笛で、煤竹(すすだけ)という特殊な竹で作られています。「ヒシギ」「オロシ」など、独特の音階と奏法を持ち、能の謡(うたい)や舞の伴奏として、幽玄な世界観を表現します。
管の内側に「ノド」と呼ばれる歌口(うたぐち)と指孔の間に狭い部分があるのが特徴で、これによって、音程や音色を微妙に変化させることができます。一本の笛で、幅広い音域と表現力を持つ、奥深い楽器です。
龍笛(りゅうてき)- 雅楽の主旋律を奏でる、華麗な音色
雅楽に用いられる横笛で、竹製の管体に7つの指孔があります。その名の通り、龍の鳴き声に例えられる、華やかで力強い音色が特徴です。
雅楽の合奏では、主に主旋律を担当し、楽曲全体をリードします。音域が広く、表現力も豊かで、雅楽の優美な世界観を表現する上で、欠かせない存在です。
篠笛(しのぶえ)- 祭り囃子から叙情的な曲まで、幅広い表現力
竹で作られたシンプルな横笛で、日本の伝統音楽に幅広く用いられています。指孔の数は6孔、7孔、8孔など、様々な種類があり、地域や流派によって異なります。
祭り囃子(まつりばやし)や民謡、長唄など、様々なジャンルの音楽で用いられ、その素朴で親しみやすい音色は、日本の風景を思い起こさせます。初心者でも比較的簡単に音を出せるため、和楽器入門としても人気があります。
神楽笛(かぐらぶえ)- 神楽を彩る、神聖な響き
神楽(かぐら)に用いられる横笛で、龍笛よりも細く、高い音域を持っています。その名の通り、神様に捧げる音楽である神楽の演奏に用いられ、神聖な雰囲気を醸し出します。
神楽笛の音色は、神社の境内や神事の場に響き渡り、人々の心を清め、神様との繋がりを感じさせてくれます。
高麗笛(こまぶえ)- 雅楽に異国情緒を加える、独特な音色
雅楽に用いられる横笛の一種で、龍笛よりも細く、短いのが特徴です。その名の通り、高麗楽(こまがく)という、朝鮮半島から伝来した音楽に用いられます。
龍笛とは異なる独特の音階と音色を持ち、雅楽の演奏に、異国情緒あふれる彩りを添えます。
尺八(しゃくはち)- 虚無僧の魂を伝える、深遠な響き
竹で作られた縦笛で、江戸時代には虚無僧(こむそう)が托鉢(たくはつ)の際に吹いていたことで知られています。一尺八寸(約54.5cm)の長さが基本ですが、様々な長さのものがあります。
息の吹き込み方や指使いによって、音程や音色を微妙に変化させることができ、その深みのある音色は、聞く人の心を落ち着かせ、瞑想的な世界へと誘います。
一節切(ひとよぎり)- 素朴で温かい音色、尺八の原型
尺八の原型とされる縦笛で、竹の一節(ひとよ)で作られています。尺八よりも短く、素朴で温かみのある音色が特徴です。
室町時代に流行し、茶の湯の席などで演奏されました。現在では、演奏される機会は少ないものの、尺八のルーツを知る上で、貴重な楽器です。
笙(しょう)- 天から降り注ぐ光のような、神秘的な和音
17本の細い竹管を束ねた、鳳凰が翼を広げたような形をした管楽器です。
息を吸っても吐いても音が出るのが特徴で、複数の竹管から同時に音を出すことで、美しい和音を奏でます。その音色は、「天から降り注ぐ光」にたとえられ、雅楽の合奏では、楽曲全体に幻想的な雰囲気を与えます。
篳篥(ひちりき)- 雅楽に欠かせない、独特な音色
竹製の短い縦笛で、ダブルリード(2枚の葦を重ねたもの)をくわえて吹きます。音域は狭いですが、独特の音色と表現力を持ち、雅楽の合奏では、主旋律や重要な旋律を担当します。
その音色は、「ピー」という甲高い音から、「ヒャー」という哀愁を帯びた音まで様々で、雅楽の独特な世界観を表現する上で、重要な役割を果たしています。
【弦楽器】繊細かつ情熱的に、心を揺さぶる
弦楽器は、弦の振動を音に変える楽器の総称です。弦を弾く、擦る、叩くなどの方法で音を出し、その奏法や弦の数・材質・共鳴胴の形などによって、多彩な音色を生み出します。
ここでは、主に弦を指や撥(ばち)で弾いて音を出す「撥弦楽器」を中心に、日本の弦楽器を紹介します。
琵琶(びわ)- 物語を語り、心を揺さぶる
4~5本の弦を持つ、洋梨のような形をした撥弦楽器です。その起源は古代ペルシャに遡り、シルクロードを経て日本に伝来しました。
奈良時代には雅楽に用いられ、その後、様々なジャンルに発展。琵琶は、単なる楽器としてだけでなく、物語を語るための道具としても用いられています。
琵琶法師と呼ばれる人々は、琵琶を弾きながら物語を語り、人々の心を揺さぶり、感動を与えました。
楽琵琶(がくびわ)- 雅楽を彩る、優美な音色
雅楽に用いられる琵琶で、4本の弦と4つの柱(じ)を持ちます。他の琵琶に比べて小型で、優美な音色が特徴です。
雅楽の合奏では、主に旋律の一部を担当し、楽曲に華やかさを添えます。その音色は、宮廷音楽の優雅な雰囲気を表現する上で、欠かせない存在といえるでしょう。
盲僧琵琶(もうそうびわ)- 宗教音楽を支える、荘厳な響き
盲目の僧侶によって演奏された琵琶で、宗教音楽に用いられた和楽器です。呪術的な意味合いを持つ音楽を奏で、悪霊を払い、人々の心を癒しました。力強い響きと、独特の節回しが特徴です。
平家琵琶(へいけびわ)- 平家物語を語る、哀愁漂う音色
「平家物語」を語る際に用いられる琵琶です。盲僧琵琶をもとに発展したといわれています。平家一門の栄枯盛衰を語る、哀愁を帯びた音色が特徴です。語り手の声と琵琶の音色が一体となり、聞く人の心に深く響きます。
薩摩琵琶(さつまびわ)- 力強い響き、武士の心を表現
薩摩藩(現在の鹿児島県)で武士の教養として発展した琵琶です。大型で力強い響きが特徴です。武士の心を鼓舞し、戦意を高めるために用いられました。撥(ばち)も大きく、力強く弦を打ち付けるように演奏します。
筑前琵琶(ちくぜんびわ)- 優美で繊細な音色、女性に愛された
明治時代に福岡県で生まれた琵琶で、薩摩琵琶をもとに、女性にも演奏しやすいように改良されました。小型で、優美で繊細な音色が特徴です。女性の愛好家が多く、家庭音楽としても親しまれる和楽器です。
箏(こと)- 優雅な調べ、日本の心を奏でる
長い桐製の胴に13本の弦を張った撥弦楽器です。奈良時代に中国から伝来し、雅楽に用いられました。その後、様々なジャンルに発展し、現在では日本の代表的な伝統楽器の一つとなっています。
柱(じ)と呼ばれる可動式の支柱で弦の音程を調節し、爪(つめ)と呼ばれる義甲を指にはめて弦を弾いて演奏します。その優雅で美しい音色は、多くの人々に愛され、日本の風景や心情を表現する上で、欠かせない存在です。
楽箏(がくそう)- 雅楽を彩る、格式高い音色
雅楽に用いられる箏で、13本の弦と、固定された柱(じ)を持ちます。他の箏に比べて大型で、重厚な響きが特徴です。雅楽の合奏では、主に旋律の一部を担当し、楽曲に格式と深みを与えます。
筑紫箏(つくしごと/つくしそう)- 優美で繊細、箏曲の基礎
室町時代末期から江戸時代初期に、賢順(けんじゅん)という僧によって大成された流派の箏です。優美で繊細な音色が特徴で、その後の箏曲の発展に大きな影響を与えました。
俗箏(ぞくそう)- 多様なジャンルで活躍、現代的な箏
江戸時代中期に八橋検校(やつはしけんぎょう)によって確立された箏曲、およびそれ以降に発展した様々な流派の箏の総称です。
雅楽の箏とは異なり、柱(じ)を動かして調弦し、様々なジャンルの音楽を演奏します。現代では、クラシック音楽やポップスなど、幅広いジャンルの音楽で用いられています。
三味線(しゃみせん)- 江戸文化を彩る、粋な音色
3本の弦を持つ撥弦楽器で、室町時代末期に中国から琉球(現在の沖縄県)を経て日本に伝来。江戸時代には、歌舞伎や人形浄瑠璃などの伴奏楽器として発展し、庶民の間にも広まりました。
三味線の音色は、粋で華やかでありながら、どこか哀愁を帯びており、江戸文化を象徴する楽器のひとつといえるでしょう。
細棹三味線(ほそざおしゃみせん)- 繊細で優美、長唄などに使用
棹(さお)が細い三味線で、繊細で優美な音色が特徴です。主に長唄(ながうた)などの伴奏に用いられます。
中棹三味線(ちゅうざおしゃみせん)- バランスの取れた音色、地歌などに使用
細棹と太棹の中間の太さの棹を持つ三味線で、バランスの取れた音色が特徴です。主に地歌(じうた)や常磐津節(ときわづぶし)などの伴奏に用いられます。
太棹三味線(ふとざおしゃみせん)- 力強く迫力のある音色、義太夫節などに使用
棹が太い三味線で、力強く迫力のある音色が特徴です。主に義太夫節(ぎだゆうぶし)などの伴奏に用いられます。
三線(さんしん)- 沖縄の心を歌う、陽気な音色
沖縄県(琉球)の代表的な弦楽器で、三味線の原型とされています。蛇皮線(じゃびせん)とも呼ばれ、胴にニシキヘビの革が張られているのが特徴です。
三味線よりも小型で、陽気で明るい音色が特徴です。沖縄の民謡や舞踊には欠かせない楽器であり、人々の暮らしに深く根付いています。
胡弓(こきゅう)- 哀愁を帯びた音色、日本で唯一の擦弦楽器
日本の伝統楽器の中で唯一、弓を使って弦を擦って音を出す擦弦楽器です。
3~4本の弦を持ち、三味線に似た形をしていますが、弓で弾くことによって、ヴァイオリンのような、哀愁を帯びた独特の音色を奏でます。江戸時代には、三味線や箏とともに「三曲合奏」として親しまれました。
和琴(わごん/やまとごと)- 日本固有の楽器
日本古来の弦楽器で、6本の弦を持つ、細長い板状の共鳴胴を持つ楽器です。「古事記」や「日本書紀」にも登場し、神事や宮廷儀式などで用いられてきました。
現在は、主に雅楽の国風歌舞(くにぶりのうたまい)に用いられます。素朴で優しい音色が特徴です。
おわりに
この記事では、日本の伝統楽器である「和楽器」の種類とその魅力について、打楽器、管楽器、弦楽器の3つのカテゴリーに分けて詳しく紹介しました。
太鼓の力強い響き、笛の澄んだ音色、そして弦楽器の繊細な調べ…各楽器が持つ独特の音色は、古来より日本人の暮らしや文化、芸能と深く結びつき、私たちの心に様々な情景を呼び起こします。
今回紹介した以外にも、日本には数多くの魅力的な和楽器が存在します。それぞれの楽器が持つ歴史や背景を知ることで、その音色はさらに深みを増し、私たちの心を豊かにしてくれるでしょう。
ぜひ、この記事をきっかけに、和楽器の世界に触れてみてください。演奏会に足を運んでみたり、実際に楽器に触れて音を出してみたりするのも良いでしょう。
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和楽器の音色に耳を澄ませ、その奥深い世界を心ゆくまで楽しんでみてください。そして、日本の伝統文化の素晴らしさを、改めて感じていただけたら幸いです。
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