蘭奢待
出展:国立文化財機構所蔵品統合検索システム(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/R-1139?locale=ja)を加工して作成
香木収集において非常に高い価値を持つ「蘭奢待」。これは織田信長をはじめとした、かつての権力者たちが手にした貴重な香木です。この記事では香木としてのその特性、なぜこれほどまでに価値があるのか、そして日本の歴史の中で果たしてきた役割について解説します。
蘭奢待(らんじゃたい)とはなにか
所蔵されている「東大寺 正倉院」
蘭奢待とは、日本の歴史において「天下第一の名香」と称される特別な香木です。この香木の正式名称は「黄熟香(おうじゅくこう)」で東大寺正倉院に保管されており、その存在は高貴な香りと共に古代日本の文化や歴史における重要な象徴となっています。
不整形な木材で構成され、そのサイズは約1.5メートルの長さ、最大43センチメートルの直径、重さは約11.6キログラムで、内部が空洞化していることが特徴です。この空洞は香りを最適化するためのものとも考えられています。
また、蘭奢待の名前には「東大寺」の名が隠されており、これは蘭奢待が東大寺と深い関係を持つことを示唆しています。
蘭奢待が正倉院に納められた正確な経緯は明らかになっていませんが、宝物の移動や藤原葛野麻呂が唐から持ち帰った際に含まれていた可能性が指摘されています。蘭奢待は日本の歴史や文化における貴重な遺産であり、その価値は計り知れません。
正倉院のほかには、徳川美術館や厳島神社に切り取られた蘭奢待が所蔵されています。
蘭奢待はどのような香りがするのか
蘭奢待は燃焼時に放つ香りも非常に素晴らしいものとされていますが、あまりにも貴重な存在から現在ではその香りを味わうことはできません。
過去には明治天皇による聞香で、「薫烟芳芬(くんえんほうふん)として行宮に満つ」の記録が残されています。他には「香気軽く清らか」と記されている文献もあり、高貴な香りを発するのではないかと推測されます。
蘭奢待の香りがどうしても気になる場合には、沈香にそれを求めてみるのも良いでしょう。
調査ですべてが明らかになっていない部分があるものの、蘭奢待の成分はジンチョウゲ科ジンコウジュ属の樹脂や精油が沈着した沈香の一種であり、その産地はインドシナ半島東部の山岳地帯と推定されています。
沈香も高級な香木の一つですが、蘭奢待のロマンを求めるなら産地の近いものを探すのも香木ならではの楽しみ方です。
蘭奢待の文化的・社会的影響
蘭奢待は、その香りが高貴な価値を持つだけでなく、日本の権力者たちによって権威や権力の象徴として利用されてきた歴史があります。
足利義満、足利義教、足利義政といった武家政権の指導者たちは、蘭奢待を自らの権力の証として使用しました。
織田信長は1574年にこの貴重な香木の一部を截香(切り取り)して、その一部を正親町天皇に献上するという行為を行っています。この行為は時として横暴と見なされることもありますが、当時の記録によれば、信長のこの行動はむしろ東大寺や春日大社への敬意の表れとも解釈されています。
蘭奢待によって権力を誇示した織田信長像(岐阜駅前)
また、NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の放送にも蘭奢待が登場しているなど、蘭奢待をテーマにした小説や文学も多くあり、各分野へ影響を与えています。
香木の価値と評価
蘭奢待は、現代においてもその価値が高く評価され続けています。香木としての蘭奢待は、その値段をつけるのは現実的ではないほどです。
また、蘭奢待が一般的に出回っている可能性は非常に低いため、本物かどうかの判別にも困難を極めます。判断するためには、香木の色、質感、重さ、そして裏付けとなる証明書や資料の有無などが大きなポイントになります。
蘭奢待以外にも高い価値を持つ香木があり、「白檀」「沈香」「伽羅」といった種類があります。これらは香木買取の市場でも高価買取の対象となっており、状態が良いものは金価格以上の価格帯で取引されています。
おわりに
この記事では、蘭奢待の深い歴史、その価値、そして文化的意義についてお伝えしてきました。蘭奢待はただの香木を超えた存在であり、日本の文化遺産の中でも特別な位置づけにあります。その稀少性は私たちの手が、気軽に届くものではないほどの高い価値を持っています。
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