オールドノリタケの裏印|代表的な種類と年代・価値の見分け方
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ご自宅の食器棚や実家の押し入れ、あるいはアンティークショップの片隅で、底面に見慣れないマークが入った美しい陶磁器を見かけたことはないでしょうか。
西洋風の華やかな絵付けや繊細な金彩をまといながら、どこか日本の職人技の息づかいも感じさせる品格。それは、日本の近代陶磁器を代表する「オールドノリタケ」かもしれません。
オールドノリタケとは、明治中期から第二次世界大戦終結頃までに、貿易商社の森村組や、現在のノリタケ株式会社の前身である日本陶器によって製作・販売・輸出された陶磁器の総称です。
花瓶や飾り皿などの装飾品から洋食器まで種類は幅広く、欧米の好みや流行を取り入れた意匠と、日本の職人による精緻な装飾が持ち味。
海外市場を目指して発展した、日本の近代陶磁器を代表する製品群のひとつです。
器を裏返すと、底面に緑や青、赤、金色などで小さなマークが入っているのがわかります。これが「裏印」で、英語では「バックスタンプ」と呼ばれるものです。
裏印には、会社やブランドを示す文字や図柄、「Hand Painted」といった装飾に関する表記、「NIPPON」「JAPAN」などの原産国表示が組み合わされています。
専門資料では100種類以上とも紹介されており、時代や販売先、材質、用途に応じてさまざまな意匠が生まれました。長く使われ続けた印や、使用時期が重なり合う印もあるのです。
本記事では、オールドノリタケの裏印の種類や見分け方、そして本物と模造品の違いなどについて解説します。
目次
オールドノリタケの代表的な裏印の種類と特徴

ここでは、オールドノリタケを調べる際に知っておきたい代表的な裏印を紹介します。同じ通称でも図案は複数あり、使用年代の整理にも資料ごとに幅があります。
表の年代は目安として捉え、文字の配置や図柄まで照らし合わせてみてください。
※ この表は横にスクロールして閲覧できます
| 裏印の名称 | 主な特徴 | 使用年代の目安 | 主な販売先・対象 |
|---|---|---|---|
| メープルリーフ印 | カエデの葉に「Hand Painted」「NIPPON」などを組み合わせた図案 | 1891年頃〜1915年頃 | 米国向けの装飾品など |
| マルキ印 | 円の中に「木」のような図案。文字の組み合わせに複数の型がある | 初期型は1900年頃から(型により1941年頃まで) | 主に英国向け |
| ノリタケ-RC印 | 「RC」「Noritake」「NIPPON」などの飾り文字 | 1906年頃〜1921年頃 | 米国向け |
| 月桂樹-RC印 | 月桂樹と「RC」を組み合わせた図案 | 1914年頃〜1950年頃 | 国内、インド・インドネシア向けなど |
| M-NIPPON印 | 上り藤の図案に「M」「NIPPON」 | 1911年頃〜1921年頃 | 米国向け |
| M-JAPAN印 | 上り藤の図案に「M」「JAPAN」など | 1921年頃〜1941年頃 | 米国向け |
| サクラ印 | 桜の花を図案化したマーク | 1924年頃〜1935年頃 | 米国向けのファンシーウェア |
| ライジングサン印 | 昇る太陽に「Hand Painted」「NIPPON」など | 1912年頃〜1921年頃 | 米国向け(普及品にも使用) |
| ヤジロベー印 | やじろべえ状の図案に「RC」など | 1911年頃〜1940年頃(別に初期型あり) | 主に国内向け |
| 日陶の文字を用いた印 | 「日陶」の文字。月桂樹などとの組み合わせもある | 昭和初期(1930年代〜1940年代前半など、型による) | 国内向け |
それでは、各裏印の特徴や見分け方を詳しく見ていきましょう。
メープルリーフ印
メープルリーフ印は、明治期の米国向け製品に見られる代表的な裏印です。国内の専門資料では、使用年代の目安を1891年頃〜1915年頃としています。
カエデの葉を図案化したマークに、「Hand Painted」「NIPPON」などの文字を組み合わせた形が基本。
印の色は緑や青がよく知られています。花瓶や飾り皿、香水瓶といった装飾品に多く、金彩や風景画をはじめ、多彩な装飾を施した品が今に伝わっています。
初期の輸出陶磁器の特徴を知るうえで、まず押さえておきたい裏印といえるでしょう。作品そのものの評価は、装飾の内容や器形、保存状態によって決まります。
マルキ印
マルキ印は、主に英国向けの製品に使われた裏印です。初期の型は1900年頃から見られ、文字や図案を変えながら、型によっては1941年頃まで使われました。
円の中に「木」のような図案を配した形で、困難を打ち破り、物事を円満に収める願いが込められていると伝えられています。
図柄がクモに似ていることから「スパイダーマーク」とも呼ばれ、海外の資料では「Komaru」という呼称も見られます。
「Noritake」や「MADE IN JAPAN」を組み合わせた型もあり、ティーセットなどの食器や花器に見られます。円内の図案に加えて、周囲に添えられた文字にも注目してみましょう。
型の違いを見分ける大きな手がかりになります。
RC印(ノリタケ-RC印・月桂樹-RC印)
ノリタケ製品の底面で「RC」の文字を目にしたことがある方も多いはずです。RCは「Royal Crockery」に由来するとされ、高級磁器を表すものとして説明されています。
名前の響きから王室御用達を連想しがちですが、RCが示すのは高級磁器としての位置づけです。
RCを含む裏印には、いくつかの系統があります。初期の「ノリタケ-RC印」は、「RC」「Noritake」「NIPPON」などの文字を組み合わせた米国向けの印で、1906年頃〜1921年頃に使われました。
月桂樹とRCを組み合わせた「月桂樹-RC印」は、国内やインド、インドネシア向けの製品に用いられたもので、1914年頃〜1950年頃とする資料もあります。
戦後には「Rose China」という別の商標が使われた時期もありました。RCの文字を見つけたら、周囲の図案や文字の組み合わせまで確かめ、どの系統にあたるかを見極めることが大切でしょう。
M-NIPPON印とM-JAPAN印
M印は、中央に据えられた「M」と、それを囲む植物の図案が特徴です。
Mは森村に由来し、代表的なM-NIPPON印とM-JAPAN印には、森村家の家紋をもとにした「上り藤」があしらわれています。
後年には月桂樹を用いたM印も登場するため、周囲の植物が藤か月桂樹かは見分けの重要なポイント。この二つの印は原産国表示の違いで区別され、年代を考えるうえで代表的な目安となっています。
M-NIPPON印(1911年頃〜1921年頃)
上り藤とMに「Hand Painted」「NIPPON」などの文字を組み合わせた、米国向け製品の代表的な裏印です。
明治末期から大正中頃にあたるこの時期は、日本陶器の工場で近代的な生産体制が整っていった時代でもあります。
飾り壺のような装飾品から、日々の食卓を彩るテーブルウェアまで、多彩な製品が残されてきました。
M-JAPAN印(1921年頃〜1941年頃)
上り藤とMのデザインを受け継ぎ、原産国表示を「JAPAN」や「MADE IN JAPAN」に改めた型です。米国向けの原産国表示が変わった流れを、そのまま映し出しています。
この時期の製品には、花鳥画や金彩装飾に加え、1925年のパリ万国装飾美術博覧会を機に世界へ広がったアール・デコ様式を取り入れた作品も数多く見られます。
印の色は緑を中心に、金や赤系などのバリエーションがあり、文字の配置もさまざま。印全体の形を資料と照らし合わせてみてください。
サクラ印
サクラ印は、桜の花を図案化した裏印です。
代表的な型は1924年頃〜1935年頃の米国向けファンシーウェアに使われ、灰皿やパウダーボックス、小さな花挿しなど、手のひらに収まる小品にもよく見られます。
桜の図案に「JAPAN」「MADE IN JAPAN」などを組み合わせた形で、文字の配置は型によって異なります。桜のマークに加えて、印全体を見比べるのが確かめるコツです。
当時の作品には、幾何学模様や、真珠・金属を思わせる光沢を生むラスター彩が用いられました。ラスター彩とは、陶磁器の表面に薄い皮膜を作り、独特の輝きを引き出す装飾のこと。
小さな器にも大正モダンから昭和初期の華やかな空気が凝縮されており、海外のコレクターの間では「Cherry Blossom Mark」の呼び名でも親しまれています。
ライジングサン印
ライジングサン印は、昇る太陽を図案化し、「Hand Painted」「NIPPON」などを添えた裏印です。
主に1910年代から1921年頃までの米国向け製品に見られ、国内の専門資料では1912年頃〜1921年頃の印として整理されています。
子ども用の食器セットなど、日常向けの普及品にも使われたのがこの印の特徴。朝日の図案とあわせて、文字の配置や印の色を記録しておくと、資料との照合がスムーズになります。
旭日のモチーフに、海外市場へ漕ぎ出していった時代の明るい気配を感じ取るのも、鑑賞の楽しみのひとつでしょう。
ヤジロベー印・日陶印など
代表格のほかにも、販路や時代背景を物語る個性的な裏印があります。
ヤジロベー印
ヤジロベー印は、やじろべえを思わせる図案に「RC」などを組み合わせた裏印で、経営の均衡を表すものと説明されています。
初期の型に続き、1911年頃〜1940年頃には国内向けの製品にも使われました。
「日本陶器会社」「Nippon Toki Kaisha」などの文字を伴う型もあります。初期型と後年の型では文字の組み合わせが異なるため、図案と文字をセットで確認しておきましょう。
日陶印
「日陶」は日本陶器の略称です。日陶の文字を用いた裏印には複数の型があり、昭和初期の国内向け製品に見られます。
月桂樹と組み合わせたものもあり、使用年代は図案ごとに確かめていく必要があります。
日本陶器は早くから国内販売にも力を入れており、1916年には国内向けの食器販売会社として日東商会を設立しました。
日陶の裏印は、海を渡った輸出品とは別に、日本の暮らしの中で使われてきたオールドノリタケの姿を伝えてくれる存在です。
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NIPPONからJAPANへ|裏印が変わった歴史

オールドノリタケの裏印を読み解くうえで、とりわけ大きな目印となるのが、原産国表示の「NIPPON」から「JAPAN」への切り替えです。
その背景には、森村組と日本陶器の歩み、そして最大の輸出先だったアメリカの制度が深く関わっていました。
森村組と日本陶器の発展・海外輸出
1876年(明治9年)、森村市左衛門は東京・銀座に貿易商社「森村組」を創業しました。同年、弟の豊がニューヨークに雑貨店を開き、この店がのちの「モリムラブラザーズ」へと発展していきます。
政府の援助に頼らず、独立自営の精神で海外貿易に挑んだ点も、森村組の大きな特徴です。
扱う商品のなかで陶磁器の売れ行きが伸びると、森村組は花瓶や飾り皿などの装飾品に力を注ぐようになります。
初期には瀬戸などで作られた素地を、東京・京都・名古屋の専属工場で上絵付けし、海外へ送り出していました。
やがて目標は、欧米の家庭で使われる洋食器の製造へ。そこで課題となったのが、求められる白さを備えた素地の開発と、ディナーセットに欠かせない大皿を均一に作る技術でした。
1904年(明治37年)、愛知県愛知郡鷹場村大字則武、現在の名古屋市西区則武新町に「日本陶器合名会社」を創立。
研究と試作を重ねた末、1914年(大正3年)に日本初のディナーセット「セダン」が完成し、アメリカへの輸出が始まりました。
原産国表示がNIPPONからJAPANへ変化した背景
アメリカでは1890年にマッキンリー関税法が成立し、翌1891年3月から、通常表示がなされる外国製品や輸入品の包装に、原産国を英語で示すことが求められるようになりました。
日本から輸出された陶磁器で原産国を示す文字として使われたのが「NIPPON」です。メープルリーフ印やM-NIPPON印に見られるNIPPONの文字は、この時代に生まれました。
転機が訪れたのは1921年(大正10年)。
米国の税関当局が「NIPPON」に代わる英語表記として「JAPAN」を求めたことを受け、米国向け製品の裏印も「JAPAN」「MADE IN JAPAN」へと移っていきます。
こうした経緯から、米国向けの陶磁器では、NIPPON表記が1891年頃〜1921年頃の製品を考える手がかりになっています。
同じ時期にもJAPAN表記の品はあり、英国向けなど米国以外の市場では表記の使われ方も異なるものです。さらにJAPANやMADE IN JAPANの表記は、戦後の製品にも引き継がれました。
「1921年」という節目を大きな目印として押さえつつ、図柄や器形、装飾と組み合わせて年代を絞り込んでいきましょう。
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ご自宅にある陶磁器がオールドノリタケかもしれないと思ったら、どのように確かめればよいのでしょうか。具体的なチェックポイントを整理しました。
裏印の図柄・文字・原産国表記を確認する
器はテーブルなど安定した場所で扱い、底面や高台の内側にある裏印を確認しましょう。明るい場所で写真を撮っておき、必要に応じてルーペで細部を観察すると、資料と見比べやすくなります。
1. 中央のシンボルマークの形を見る
カエデの葉、上り藤に囲まれたM、円の中のマルキ印、桜、昇る太陽など、図案の特徴を確認します。
似た印でも周囲の植物や文字の配置に違いがあるため、中央のマークだけでなく、印全体を見比べるのがポイントです。
2. 原産国表記の綴りを確認する
「NIPPON」「JAPAN」「MADE IN JAPAN」のどれが記されているかを確かめます。米国向けの製品であれば、1921年頃の表示変更がひとつの目安です。
輸出先や裏印の種類によって使われ方が変わるので、図案とあわせて読み解いていきましょう。
3. 添えられている英単語を読む
「Hand Painted」は、手作業による絵付けが施されていることを示す表記です。手描きと転写を組み合わせた製品もあるため、装飾全体の描き方もあわせて観察してみてください。
「Noritake」「RC」などの文字も記録しておくと、資料を探す際に役立ちます。なお、「NIPPON」は原産国を示す表記で、ノリタケ以外の製品にも使われています。
4. スタンプの色調を観察する
裏印には緑、青、赤系、金などの色が使われています。色も記録しておけば、資料と見比べる際の材料になるでしょう。年代や品質、販売先は、色と図柄・文字を総合して考えていくものです。
器の形や装飾の特徴も合わせて調べる
裏印を確認したら、次は器の表側へと視点を広げてみましょう。同時代の作品や図録の掲載品と見比べると、裏印だけでは見えてこない特徴が浮かび上がってきます。
素地の厚みと白さ
素地の白さや色合い、厚み、透光性は、製造時期に加えて材質や器の用途によっても変わります。
オールドノリタケには硬質磁器のほか、昭和初期に登場した、クリーム色を帯びるボーンチャイナもあります。裏印や器形、装飾と組み合わせて観察すると、素地の特徴もより意味を持ってくるでしょう。
装飾の美術様式
装飾の美術様式には以下が挙げられます。
アール・ヌーヴォー様式(明治後期〜大正初期)
植物の茎や花、波などをモチーフにした流れるような曲線美や、優雅で幻想的な女性像が特徴。メープルリーフ印や初期のM-NIPPON印の時代の製品に多く見られます。
アール・デコ様式(大正末期〜昭和初期)
直線や円、幾何学模様を組み合わせたシャープな構成、原色を生かしたコントラストの強い配色、異国趣味を取り入れたモダンな意匠が特徴です。
サクラ印やM-JAPAN印が使われた時期の製品に、こうした意匠を取り入れたものが見られます。
裏印から推定される年代と、器形や装飾に表れた特徴を照らし合わせることで、その品物の背景をより立体的に捉えられます。
様式は時代をまたいで受け継がれることも多いため、デザインと裏印は互いを補い合う手がかりとして活用しましょう。
裏印とオールドノリタケの骨董品としての価値

愛好家やコレクターの間で、オールドノリタケは古い食器という枠を超え、優れた近代の美術工芸品として評価されています。
骨董品としての価値はどのように決まるのか。裏印との関係や、評価を左右する要素を見ていきましょう。
裏印の希少性と製品の年代
「珍しい裏印があれば、それだけで価値が高いのでは?」と考える方も多いでしょう。裏印の珍しさや製造年代は、作品を評価する際の手がかりのひとつです。
最終的に価値を左右するのは、裏印を含めた品物全体の魅力にほかなりません。
同じ裏印の製品でも、器形、装飾の内容、保存状態、セットのそろい方によって評価は変わってきます。
金盛りなどの緻密な装飾が見どころの作品もあれば、アール・デコならではの大胆な意匠に魅力が宿る作品もあります。
裏印は、作品が生まれた背景を調べるための情報。品物全体の特徴や、類似品の取引状況とあわせて価値を考えることが大切です。
金盛り・タペストリーなどの装飾技法
オールドノリタケの見どころのひとつが、職人による多彩な装飾技法です。
立体的な盛り上げや金彩、布目を生かした表現などが器の形と組み合わさり、さまざまな意匠が生み出されました。
盛り上げ(Moriage)と金盛り
盛り上げは、イッチンと呼ばれる器具や筆を使い、泥漿(でいしょう)や盛り絵具で器の表面に立体的な文様を描き出す技法です。
その盛り上げた文様に金彩を施したものが「金盛り」。光を受けると凹凸が豪奢な陰影を生み、オールドノリタケを代表する華やかな装飾として知られています。
小さな点状の盛り上げに金彩を施した「金点盛り」もあり、整然と並ぶ細かな粒からは職人の緻密な手仕事が伝わってきます。
タペストリー技法
タペストリーは、器の表面に布目のような凹凸を付け、絵画のキャンバスを思わせる質感を表す技法です。
代表的な方法では、素焼き前の柔らかな素地に布を押し当てて布目を写し取り、焼成後に彩色します。
つやを抑えた肌合いに風景画や花の絵が重なると、ヨーロッパの織物を思わせる、しっとりとした絵画的な表情が生まれます。
コバルトと金彩の組み合わせ・エッチング
深い瑠璃色と金彩の組み合わせも、オールドノリタケの大きな見どころです。コバルトによる青い地色に金盛りなどを合わせることで、色彩と立体感が鮮やかに響き合います。
金彩の技法には、釉薬の表面を部分的に腐食させて模様を作り、その上に金彩を施す「エッチング(金腐らし)」もあります。金の面に繊細な模様が浮かぶ、格調高い装飾です。
エナメル盛り・ジュール(擬宝石)装飾
エナメル盛りは、ガラス分の多い盛り絵具を使い、光沢のある立体的な装飾を作る技法です。
小さく盛った装飾を宝石に見立てた「ジュール(擬宝石)」もあり、金盛りと組み合わせた華やかな作品が残されています。
デザイン・器形・保存状態による評価
オールドノリタケの骨董的価値は、技巧の細かさに加え、デザインや器の形、コンディションによっても変わります。
テーマ性とデザインの希少性
オールドノリタケの題材は、風景、人物、動植物と多彩です。
白鳥が舞う湖畔の景色、人物像を配した絵付け、幾何学的な意匠を取り入れたアール・デコ調の作品など、題材によって印象もがらりと変わります。
道化師や淑女をかたどったフィギュリン(人形)も、現代のインテリアになじむ作品として親しまれてきました。
こうしたデザインの特徴や珍しさは、評価を考える材料のひとつ。具体的な価格は、作品の状態やその時点の需要によって決まります。
器の形状(ファンシーウェアかテーブルウェアか)
大型の花瓶や飾り壺、脚付きの皿や鉢であるコンポートなどの装飾品(ファンシーウェア)には、器形と装飾の両方を楽しめる作品が多くあります。
カップや皿といった食器にも、緻密な装飾や個性的なデザインを備えた品は少なくありません。
評価にあたっては、装飾品か食器かという分類に加え、意匠、寸法、技法、セットの構成などを総合的に見ていきます。
コンディション(保存状態)
陶磁器は破損しやすいため、保存状態は評価を大きく左右します。ヒビ(ニュウ)や欠け(ホツ)、修復跡の有無に加え、金彩や絵付けの擦れ、盛り上げ装飾の欠落なども確認したいポイントです。
状態を確かめる際は強く触れたり擦ったりせず、目視と写真で記録しておくと安心です。
海外へ輸出され、日本に戻ってきた「里帰り品」
オールドノリタケについて調べていると、「里帰り(さとがえり)品」という情緒ある言葉によく出会います。日本で作られて海外へ輸出され、その後日本へ戻ってきた品を指す言葉です。
オールドノリタケには、アメリカやヨーロッパなどの市場へ向けて作られた製品が数多くあります。
やがて日本でも近代陶磁器の美しさや歴史的価値が見直され、研究や収集が進みました。海外から戻った作品は、美術館や愛好家のもとで紹介されるようになっています。
輸出後にたどった経歴や保存状態は一点ごとに異なり、その個性もまた里帰り品の味わいといえるでしょう。
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簡単WEB査定オールドノリタケの本物と模造品の違い・保管の注意点

オールドノリタケの裏印を模した製品は、実際に確認されています。過去の意匠をもとにした正規の復刻品や、現代風にアレンジした製品もあり、当時の製品とは区別して見ることが欠かせません。
また、繊細な手仕事で作られたアンティークだからこそ、日頃の扱いにも気を配りたいところです。
裏印だけで本物かどうか判断できる?
「資料と同じ裏印があるから本物」と結論づけるのは早計です。マークを模倣した品もあるため、器全体の特徴を確かめる必要があります。
調べる際は、次のような要素を公式資料や来歴の明らかな作品と照らし合わせてみましょう。
- ☑ 裏印の図柄・文字・配置
- ☑ 器形と寸法
- ☑ 素地の質感
- ☑ 絵付けや金彩の仕上がり
- ☑ 底部(高台)の仕上げ
オールドノリタケには手描きと転写を組み合わせた製品もあり、印の鮮明さや装飾方法といった一項目だけで判断するのは困難です。複数の要素を重ね合わせることで、確かな見立てに近づけます。
確認の際は、裏印や金彩を擦らないよう注意してください。器全体と底部の写真、購入時の記録などをそろえておくと、専門家に相談するときにも役立つでしょう。
金彩や盛り上げ装飾を傷めない保管と取り扱い
ご自宅のオールドノリタケを長く美しい状態で保つには、現代の食器とは異なる、アンティークならではの丁寧な扱いが求められます。
洗浄前に状態を確認する
洗う前に、ヒビや修復跡、金彩や盛り上げ装飾の浮き・剥がれがないかを確認しましょう。傷みがある品や、素地・装飾の性質がわからない品は、水洗いや浸け置きを控えておくのが安心です。
状態が良好で、水洗いに適した品に限り、柔らかいマットなどを敷いた容器の中で、ぬるま湯を使って優しく洗います。
洗剤を使える場合は中性洗剤を少量にとどめ、布やスポンジを装飾に引っ掛けないよう注意してください。洗い終えたら、十分に自然乾燥させます。
食器洗い乾燥機や電子レンジ、漂白剤、研磨剤入りの洗剤、硬いタワシは使用を避けましょう。
落ちにくい汚れを無理に取り除こうとすると、装飾を傷める原因になります。気になる汚れは、保存修復の専門家に相談するのが確実です。
保管環境と重ね方の工夫
直射日光で高温になる場所や、冷暖房の風が直接あたる場所を避け、温度や湿度の変化が少ない安定した場所で保管しましょう。扉付きの棚に収めれば、ほこりも付きにくくなります。
金彩や盛り上げ装飾のある品は、できるだけ重ねずに収納するのが基本です。皿を重ねる場合は、柔らかな緩衝材を間に挟み、枚数も控えめにしてください。
持ち運ぶときは、取っ手や注ぎ口だけをつかまず、底を支えて両手で扱います。蓋など外れやすい部分も、落とさないよう気を配りましょう。
おわりに

オールドノリタケの底に記された裏印は、製造時期や販売先を考えるための大切な手がかりです。
その図柄や文字には、森村組と日本陶器の歩みや、海外市場に合わせて製品づくりを重ねてきた歴史が刻まれています。
メープルリーフ印に見る初期輸出の面影、M-NIPPON印からM-JAPAN印への移り変わり、サクラ印の時代を彩ったアール・デコの意匠——。
裏印を器の形や装飾と照らし合わせるほど、目の前の器がたどってきた物語が鮮やかに浮かび上がってくるでしょう。
ご自宅やご実家でオールドノリタケらしき品を見つけたら、まずは裏印と器全体の特徴を確かめてみてください。
年代や価値を詳しく知りたいときは、写真や購入時の記録をそろえて専門家に相談するとスムーズです。
私たち「日晃堂」では、オールドノリタケをはじめとする陶磁器や食器の買取相談を受け付けています。大切に受け継いできたお品物の売却を検討されている方は、お気軽にご相談ください。
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