上絵付けと下絵付けの違いとは?特徴・見分け方と代表的な陶磁器
読まれています
日本の伝統的な和食器や、ヨーロッパの名窯が手がける洋食器を眺めていると、器ごとに模様の質感や色合いが大きく異なることに気づきます。
透き通るようなガラス質の奥から浮かび上がる深い青の絵柄もあれば、表面に絵の具をのせたように鮮やかな赤や緑、きらびやかに輝く金色もあり、その表情は実に多彩です。
こうした装飾表現の違いを生む要素の一つが、「下絵付け(したえつけ)」と「上絵付け(うわえつけ)」という二つの絵付け技法です。
素地や釉薬、色材、焼成方法の組み合わせによっても仕上がりは変わり、陶磁器ならではの豊かな表情が生まれます。
陶磁器に興味を持ち始めた方や、ご自宅の古い器の成り立ちを知りたい方にとって、「上絵付けと下絵付けは何が違うのか」「手元の器はどちらの技法で作られたのか」は気になるところでしょう。
本記事では、上絵付けと下絵付けの違いを、制作工程や焼成温度、釉薬との位置関係からわかりやすく解説します。
目次
上絵付けと下絵付けの違いとは?

上絵付けと下絵付けの基本的な違いは、釉薬に対する絵柄の位置と、絵付けを行う工程にあります。
下絵付けは釉薬を掛ける前の素地に絵柄を描き、上絵付けは釉薬を掛けて本焼きした器の表面に装飾を施す技法です。
釉薬は、焼成によって器の表面にガラス質の層を作る材料のこと。器に色や質感を与えるほか、水や汚れを浸透しにくくする役割も担っています。
この釉薬を基準に、どのタイミングで絵柄を描くかによって技法の呼び名が分かれるのです。
陶磁器の絵付けには、本焼き後の釉薬面に施した絵柄を再焼成で釉薬の中へ溶け込ませる「釉中彩(ゆうちゅうさい/イングレーズ)」という技法もあります。
本記事では、基本となる下絵付けと上絵付けを中心に見ていきましょう。
釉薬との位置関係と制作工程の違い
二つの技法の違いを理解するには、制作工程の順序をたどるのがポイントです。
有田焼などの磁器を例にすると、制作はおおむね次の流れで進みます。下絵付けと上絵付けは、器の装飾に応じて必要な工程を選んで行います。
成形・乾燥
調製した原料で器の形を作り、十分に乾燥させます。
素焼き(すやき)
本焼きより低い温度で焼き、絵付けや施釉をしやすい素地に整える工程。有田焼では約900℃が目安です。
下絵付け
素焼きした素地に、呉須などの絵の具で文様を描きます。
施釉(せゆう)
絵柄を覆うように釉薬を掛けます。焼成前の透明釉は白っぽく、下絵が見えにくくなる場合もあります。
本焼き(ほんやき)
約1,300℃を目安に焼成し、素地を焼き締めながら釉薬を溶かしてガラス質の層にします。
上絵付け
本焼きを終えた器の釉薬面に、上絵の具で文様を描きます。
上絵焼成
上絵の具に適した温度で再び焼き付けます。有田焼では約700〜800℃で行う例があります。
工程や温度は、素地・釉薬・絵の具の種類や、産地・メーカーの製法によって変わります。たとえばマイセンでは、本焼きを約1,400℃で行うと紹介されています。
このように、下絵付けは釉薬を掛ける前の素地に絵柄を描き、施釉して焼き上げる技法です。素地に描かれた絵柄の上を、釉薬の層が覆う構造になります。
これに対して上絵付けは、釉薬を掛けて本焼きした器の表面に絵柄を描き、一般に本焼きより低い温度で焼き付ける技法。絵柄は釉薬層の上にのる形になります。
こうした工程の違いが、使える絵の具や表面の質感、装飾の耐久性の違いにつながるのです。
焼成温度や色彩表現の違い
制作工程の違いは、絵の具に求められる性質にも関わってきます。
下絵付けでは、顔料も釉薬とともに本焼きの高温にさらされます。焼き上がりに狙いどおりの色を得るには、顔料と釉薬の組み合わせ、温度、酸化・還元といった焼成条件の調整が欠かせません。
その代表的な絵の具が、コバルトを含む「呉須(ごす)」です。焼成によって青く発色し、染付の文様を描く絵の具として古くから広く使われてきました。
下絵付けには、鉄を用いた褐色系の「鉄絵」や、銅を赤く発色させる「釉裏紅(ゆうりこう)」などもあり、青以外の表現にも長い歴史があります。
近代に入ると合成顔料が発達し、使える色はさらに広がりました。発色は顔料の成分に加え、釉薬との相性や焼成条件によっても変化します。
上絵付けは一般に本焼きより低い温度で焼成するため、高温では扱いにくい色材も取り入れやすく、多彩な色彩を表現できます。
上絵の具にもそれぞれ適した焼成温度があり、職人は焼成による色の変化を見越して調合や絵付けを行っています。
金・銀・白金などを使う金彩・銀彩・プラチナ彩も、本焼き後の器に施して焼き付ける装飾です。
下絵付けと上絵付けの主な違いを整理すると、以下のようになります。
※ この表は横にスクロールして閲覧できます
| 比較項目 | 下絵付け(したえつけ) | 上絵付け(うわえつけ) |
|---|---|---|
| 釉薬との位置関係 | 絵柄を釉薬の層が覆う | 本焼き後の釉薬面に絵柄を焼き付ける |
| 絵付けのタイミング | 施釉の前(有田焼などでは素焼き後) | 施釉・本焼きの後 |
| 焼成温度の例(有田焼) | 本焼き約1,300℃ | 上絵焼成約700〜800℃ |
| 色彩の傾向 | 呉須の青が代表的。鉄絵や釉裏紅、多色の下絵付けもある | 多彩な色を使いやすく、金彩などと組み合わせる例も多い |
| 表面の質感 | 絵柄が釉薬に覆われる。質感は釉薬や素地にも左右される | 絵の具の種類や厚みにより、盛り上がりや艶の違いが見られる |
| 装飾の耐久性 | 絵柄が直接擦れにくい | 表面の装飾が摩擦などの影響を受けることがある |
※焼成温度は有田焼の工程例です。実際の温度や色調、耐久性は、素地・釉薬・顔料の組み合わせ、酸化焼成・還元焼成といった焼成雰囲気、製品の仕様によって異なります。
高温の本焼きで釉薬とともに仕上げる下絵付けと、焼き上がった釉薬面に色彩を重ねる上絵付け。二つは、それぞれ異なる目的と美しさを持った技法なのです。
陶磁器買取なら、日晃堂にお任せください。
陶磁器買取なら【日晃堂】にお任せください!有田焼や備前焼をはじめ、中国骨董品の唐物陶器や古備前、有名作家の作品など、陶磁器の高価買取には自信があります。無料の出張査定であれば、陶磁器が割れてしまう心配もございません。陶磁器の売却をお考えなら、ぜひ日晃堂までお問い合わせください。
下絵付けの特徴と魅力

下絵付けは、古くから世界の陶磁器文化を支えてきた王道の技法です。
中国の景徳鎮をはじめ、日本の伊万里・有田焼、ヨーロッパの名窯に至るまで、白磁に青い文様を施した名品が数多く残されています。
釉薬の層の下に絵柄が収まる下絵付けには、独自の美しさと実用的な魅力が備わっています。
呉須で青い模様を描く「染付」
下絵付けを語るうえで欠かせないのが「染付(そめつけ)」です。
染付とは、白い素地に呉須で絵柄を描き、透明な釉薬を掛けて焼き上げた陶磁器、またはその技法のこと。
焼成すると文様は青や藍色に発色し、その色合いが藍染めに似ていることから「染付」と呼ばれるようになったといわれています。
染付の魅力は、筆の運びや絵の具の濃淡が生む豊かな陰影と、深みのある青の階調にあります。素焼きの素地は水分を吸い込みやすく、筆の跡がそのまま残るため、描き直しは困難です。
職人は筆に含ませる水分や顔料の濃度を見極めながら、迷いのない筆致で文様を描き出していきます。
線描きした文様の内側などを絵の具で塗る「濃み(だみ)」も、染付の見どころの一つでしょう。
太い濃み筆に呉須をたっぷり含ませ、絵の具を流すように広げることで、均一な色面や豊かな濃淡を表します。
絵の具の量や広がり方を加減する作業には熟練の技術が求められ、上絵付けでも用いられる技法です。
釉薬の下に絵柄を描く下絵付けならではの表現
下絵付けの特徴は、絵柄を覆う釉薬の層を通して文様を鑑賞できる点にあります。
顔料と釉薬、焼成条件の組み合わせによって、輪郭に柔らかなにじみが生まれたり、青の濃淡に奥行きが感じられたりします。水底をのぞき込むような透明感は、下絵付けならではの醍醐味でしょう。
実用面では、絵柄が釉薬に覆われているため、絵の具が直接擦れにくいことが大きな利点です。
釉薬の傷やひびの出やすさ、食器としての安全性は、釉薬や顔料の組成、焼成条件、使い方によって決まります。
古い染付の器には、今も美しい藍色をとどめているものが少なくありません。
釉薬が絵柄を守る構造はその理由の一つで、釉薬に傷や剥落、汚れが生じた器では見え方も変わってきます。器が過ごしてきた使用・保管の環境もまた、現在の姿に表れているのです。
絵柄を守る構造と、奥行きのある瑞々しい表情。その両立こそが、下絵付けの本質的な魅力といえます。
\ WEBでのご相談・ご依頼 受付中 /
簡単WEB査定上絵付けの特徴と魅力

清澄で落ち着いた下絵付けに対し、華やかさと豊かな情緒を表現できるのが上絵付けです。
焼き上がった器という「完成されたカンバス」に、多彩な色で絵画のような世界を描き出す上絵付けは、陶磁器の装飾表現を大きく広げました。
赤絵・色絵に見る鮮やかな色彩
上絵付けの代表的な表現として親しまれているのが、「赤絵(あかえ)」や「色絵(いろえ)」です。
色絵は、本焼きを終えた器に色とりどりの上絵の具で文様を描き、再び焼き付ける技法。
赤絵は赤を主調とした装飾を指すほか、地域や文脈によっては色絵や上絵付けそのものを広く指す言葉としても使われます。
赤い上絵の具には酸化鉄を発色成分とするものがあり、細い線による文様や細密な描写に向いています。
赤を中心に描いた端正な器から、緑・黄・紫・青などを組み合わせた華やかな作品まで、その表情はさまざまです。
上絵の具は、発色を担う成分に、比較的低い温度で溶けるガラス成分などを調合して作られます。伝統的には鉛を含む材料が使われてきましたが、現在は無鉛の上絵の具も実用化されています。
焼成すると絵の具のガラス成分が溶け、色ガラスの膜となって釉薬の表面に定着する仕組みです。
絵の具には透明感のあるものも不透明なものもあり、厚みや塗り方によって印象が変わります。
艶のある色面をふっくらと盛り上げたり、細密な線や柔らかな濃淡を描き分けたりと、絵画的な表現の幅広さが上絵付けの大きな魅力でしょう。
金彩などの装飾と上絵付けならではの表現
上絵付けは、金属を用いた煌びやかな装飾の扉も開きました。その代表例が「金彩」や、金彩をふんだんに用いた「金襴手」です。
金彩には、金粉を用いる方法や、金の化合物を含む金液を使う方法などがあります。器の表面に文様や縁取りを施し、材料に適した温度で焼き付ける技法です。
焼成後に磨いて輝きを引き出すものもあれば、焼き上がった時点で光沢が得られるものもあり、艶やかな金と落ち着いたマットな金を使い分けて装飾に変化をつけることもできます。
器の縁を金で引き締めたり、色絵の上に金でハイライトを加えたりすると、陶磁器は貴金属細工のような輝きをまといます。
上絵付けは本焼きで形の定まった器に描くため、器形や余白を確かめながら構図を整えられるのも利点です。
細密な絵柄や、器の形を生かした装飾を施しやすく、狙いどおりの発色や仕上がりを得るために、絵の具の調合や塗り方、焼成条件の管理にも細やかな技術が注がれています。
適切に焼き付けられた上絵は、通常の使用ですぐに剥がれ落ちるものではありません。
表面の上絵や金彩は研磨剤入りのスポンジや強い摩擦で傷むことがあるため、やわらかいスポンジでやさしく洗うのが基本です。
食洗機への対応は製品ごとに異なるので、表示や取扱説明を確認しておきましょう。
金銀などの金属装飾がある器は電子レンジでスパークを起こすおそれがあり、電子レンジ対応と明示された製品を指定の条件で使う必要があります。
上絵付けと下絵付けの見分け方

お手元の器や、美術館・骨董店で目にする器が上絵付けか下絵付けかを考えることは、鑑賞の楽しみを広げてくれるでしょう。
絵柄の見え方や光の反射は、技法を見分ける手がかりです。釉中彩や複数の技法を組み合わせた作品もあるため、見た目の観察に銘や資料などの作品情報を合わせると、推測の精度が高まります。
釉薬や絵柄の見え方に注目する
まずは明るい場所で器に斜めから光を当て、絵柄と周囲の釉薬の反射を観察してみましょう。表面に映る光や絵の具の厚みに注目すると、違いを捉えやすくなります。
1. 絵柄の上まで釉薬の反射が続いているか
絵柄の上でも釉薬の反射が途切れずになめらかに続いていれば、下絵付けのように絵柄が釉薬に覆われた装飾と考えられます。
絵柄が水底に沈んでいるような奥行きを感じられるのも特徴です。釉中彩も絵柄が釉薬の中に溶け込むため、同じようになめらかな表面に仕上がります。
絵柄の部分だけ反射が異なったり、絵の具の盛り上がりが見えたりする場合は、上絵付けを考える手がかりになるでしょう。
絵の具の厚みや仕上がりは作品ごとに違うので、ほかの特徴もあわせて観察してみてください。
2. 色彩の種類を確認する
使われている色も参考になります。青や藍色で描かれた染付は下絵付けの代表例で、上絵付けにも青い絵の具があるため、青一色の器が上絵付けで描かれている場合もあります。
赤や黄、紫などの多彩な装飾には上絵付けが多く見られ、下絵付けや釉中彩で描かれた作品も存在します。
金を透明な釉薬で覆う「釉裏金彩(ゆうりきんさい)」という技法もあり、色は絵柄の見え方や作品情報と組み合わせて考える補助的な手がかりと捉えておくとよいでしょう。
3. 表面の質感と経年による変化
古い器では、経年変化の現れ方にも違いが出ます。
下絵付けは、釉薬が保たれている部分では絵柄が直接摩耗しにくい構造です。古い器にも鮮やかな藍色を残すものが多く見られ、釉薬に傷や汚れ、剥落が生じた部分では見え方が変化します。
上絵付けは釉薬の表面に絵の具の層が焼き付いているため、長年の使用や洗浄によって、重ねた器の高台と触れ合う部分や、絵柄の盛り上がった部分に、絵の具の擦れや金彩の薄れが生じることがあります。
※器の表面を爪や硬い物で擦って凹凸を確かめるのは、装飾を傷める原因になるので避けてください。目で見て光の反射や立体感を観察するのが、鑑賞の基本です。
上絵付けと下絵付けを組み合わせた「染錦」
上絵付けと下絵付けは、一つの器の上で組み合わされることもあります。
その代表が、「染錦(そめにしき)」あるいは「染付色絵(そめつけいろえ)」と呼ばれる手法です。
染錦の制作では、まず素焼きの素地に呉須で文様の骨格や輪郭線、青い地の部分などを描き、釉薬を掛けて本焼きします。この段階では、白地に青い模様が焼き上がった状態です。
続いてその器の表面に赤や緑、黄などの上絵の具で彩色を重ね、上絵窯で再び焼き上げます。ここに金彩を加える作品もあります。
こうして完成した器には、
- ☑ 釉薬の奥に静かに佇む、下絵付けの藍色
- ☑ 釉薬の上で鮮やかに咲く、上絵付けの赤や緑
- ☑ 光を受けて輝く金彩(施されている場合)
が重なり合います。
異なる技法を組み合わせることで、色彩や質感に豊かな変化が生まれるのです。古伊万里の金襴手をはじめ、名窯の磁器には染錦の技法を用いた作品が数多く見られます。
「この青い部分は下絵付けで、その上に赤や金の上絵付けが重ねられている」と読み解けるようになれば、制作工程の奥深さや職人の技術がより鮮明に感じられるでしょう。
\ WEBでのご相談・ご依頼 受付中 /
簡単WEB査定有名な陶磁器に見る上絵付け・下絵付けの魅力

絵付けの知識を持って著名な陶磁器を眺めると、産地や窯元、メーカーごとに技法がどう受け継がれ、独自の美へと昇華されてきたかが見えてきます。
ここでは、日本を代表する焼き物産地「九谷焼」、歴史ある「柿右衛門窯」、ヨーロッパの名門「マイセン」と「ロイヤル コペンハーゲン」を取り上げ、それぞれの絵付けの特徴を紹介します。
九谷焼|五彩で描く華やかな上絵付け
石川県を代表する伝統工芸品「九谷焼(くたにやき)」は、上絵付けの美を追求してきた産地として広く知られています。
その代表的な特徴が、「九谷五彩(くたにごさい)」と呼ばれる赤・黄・緑・紫・紺青の上絵の具を用いた、重厚で鮮やかな色絵装飾です。
古九谷(こくたに)の作風を受け継ぐものをはじめ、多彩な表現が育まれてきました。赤を用いず、緑・黄・紫・紺青で器面を塗り埋める「青手(あおで)」も、代表的な様式の一つです。
九谷焼では、上絵用の呉須で描いた黒い骨描き(輪郭線)に、五彩の上絵の具を重ねる伝統的な描法が見られます。
ガラス質の上絵の具を厚く盛り上げた彩色は、焼き上がると艶やかな立体感を生み、力強い線と響き合って絵画的な構図を作り出します。
九谷焼の歴史の中では、赤の上絵の具で人物や文様を細密に描き込み、要所に金彩を添えた「赤絵細描」や、絢爛な「金襴手」など、時代ごとに多様な上絵付けのスタイルが確立されました。
染付を主とした作品や、下絵付けと組み合わせた製品も作られていますが、産地を象徴するのはやはり、色彩を自在に操る上絵付けの華やかさでしょう。
柿右衛門窯|濁手の色絵と、染付を生かした染錦
佐賀県有田町の「柿右衛門窯(かきえもんがま)」は、17世紀から続く歴史ある窯元です。初代酒井田柿右衛門は、日本で初めて磁器の上絵付けに成功したと伝えられています。
柿右衛門窯を代表するのが、「濁手(にごしで)」と呼ばれる温かみのある乳白色の素地を生かした色絵磁器です。
米の研ぎ汁を思わせる柔らかな白さと、余白を十分に残した繊細な絵付けが調和した作風は、ヨーロッパの王侯貴族を魅了し、各地の磁器づくりにも大きな影響を与えました。
濁手の作品では、伝統的に染付による下絵付けを用いず、上絵付けによって文様を表します。赤や緑、黄、青などの色彩とともに、白い素地そのものの美しさを味わえるのが特徴です。
柿右衛門窯には、染付と上絵付けを組み合わせた「染錦」の製品もあります。公式サイトの制作工程でも、呉須による下絵付けの後に施釉・本焼きを行い、さらに上絵付けを施す例が紹介されています。
濁手の色絵と染錦は、それぞれ異なる方法で素地と絵柄の調和を生み出しています。作品ごとの技法に注目すると、同じ窯元の中にある表現の幅広さが見えてくるでしょう。
マイセン|ブルーオニオンと多彩な絵付け
ドイツの「マイセン(Meissen)」は、1708年のヨーロッパ初となる硬質磁器の製造成功を経て、1710年に設立された磁器製作所です。
西洋磁器の最高峰と称され、下絵付けと上絵付けの両方に代表作を持っています。
下絵付けの象徴といえるのが、1739年に完成したとされる「ブルーオニオン(Blue Onion)」。中国磁器に着想を得たザクロや桃、竹などの文様を、コバルトブルーで表したシリーズです。
伝統的な青一色の製品は、絵柄を描いた上から釉薬を掛けて本焼きするため、装飾が釉薬に覆われています。白い磁肌と澄んだ青の対比には、下絵付けならではの魅力が凝縮されています。
上絵付けでも、マイセンは卓越した技術を誇ります。
専属のペインターが一輪ごとの自然な美しさを描き出す「マイセンフラワー」と呼ばれる花絵や、緻密な人物画、「Bフォーム」や「Xフォーム」に見られる重厚な金彩装飾は、いずれも本焼き後の器に上絵付けを重ねて生み出されたものです。
日常を彩る下絵付けの名作から、美術品のような上絵付け・金彩の傑作まで。技法を巧みに使い分けてきた点に、マイセンの懐の深さがあります。
ロイヤル コペンハーゲン|ブルーフルーテッドの下絵付け
デンマーク王室の保護のもと、1775年に創業した「ロイヤル コペンハーゲン(Royal Copenhagen)」は、洗練された下絵付けの美しさを世界に広めた磁器メーカーです。
その代表作が、1775年に誕生した「ブルーフルーテッド プレイン(Blue Fluted Plain)」。同社最初のパターンとして「パターンNo.1」と呼ばれ、現在まで受け継がれています。
白磁に施された細かなレリーフ(フルート)の上に、伝統的な唐草模様がコバルトブルーで手描きされています。
制作は、素焼きの器に職人が呉須(コバルト顔料)で文様を描き、全体に釉薬を掛けて高温で焼き上げる下絵付けの工程です。
筆圧や絵の具の含み具合によって濃淡のニュアンスが一点ずつわずかに異なり、手描きならではの温もりと、釉薬に包まれた透明感が同居しています。
毎年発売されるコレクターズアイテム「イヤープレート」も、レリーフの陰影とコバルトの下絵付けによって、独特の深い青の世界を表現しています。
デンマークの植物図鑑を精緻な上絵付けと金彩で再現した「フローラ ダニカ(Flora Danica)」も、同社が誇る上絵付けの最高峰です。
そのうえでブランドの象徴として広く親しまれているのは、日々の食卓に気品を添えるブルーフルーテッドに代表される下絵付けの器といえるでしょう。
絵付け技法は陶磁器の価値にどう関係する?

お手元の古い陶磁器やアンティークを前に、「この器にはどれくらいの価値があるのか」「上絵付けと下絵付けではどちらが高く評価されるのか」と気になる方もいるでしょう。
陶磁器の評価は、絵付け技法を含むさまざまな要素を総合して決まります。技法は器を形づくる要素の一つであり、作者や制作年代、保存状態などと合わせて価値が判断されるのです。
絵付けの技術や作家・窯元が評価の手がかりになる
絵付けの技術や意匠の完成度は、陶磁器の魅力や評価を考える手がかりの一つです。
下絵付けなら、筆の運びや呉須の濃淡、濃みによる色面の表現に注目すると、作品の個性が見えてきます。上絵付けでは、色彩の調和や細密な描線、絵の具の厚み、金彩の仕上がりなどが見どころです。
実際の市場での評価には、こうした技術や意匠に加え、作者や窯元、制作年代、希少性、保存状態、来歴、需要なども関わってきます。
なかでも、誰が手がけたかを示す作家・窯元・メーカーは大きな手がかりになるでしょう。
- 人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定された陶芸家や、名工と称される作家の作品
- 柿右衛門窯、今右衛門窯など、長く技術を受け継いできた名門窯元の作品
- マイセンやロイヤル コペンハーゲンなど、歴史ある名窯の熟練ペインターによる作品
こうした作家や窯元の作品には、美術市場や骨董市場で高く評価されているものが数多くあります。個々の評価は、作品の内容や制作年代、保存状態などによって変わります。
制作年代や保存状態、共箱なども価値に関係する
骨董品としての価値を考えるうえでは、時代背景や残存状態も重要な要素です。
1. 制作年代と歴史的希少性
江戸時代前期の初期伊万里や古九谷様式の色絵磁器には、日本の磁器や色絵の発展を知るうえで重要な作品が含まれます。
制作年代の古さに加え、残存数や作品の特徴、保存状態も、歴史的・美術的な評価の手がかりです。当時の技術や美意識を伝える素朴で力強い絵付けは、古陶磁ならではの魅力といえます。
2. 保存状態(コンディション)
器がどのように受け継がれてきたかも、評価に影響します。
- ☑ 欠けやひび割れ(ニュウ)の有無、焼き継ぎなどの修理の有無
- ☑ 上絵付けや金彩の摩耗、擦れ、変色の程度
- ☑ 釉薬の傷や剥落、艶の状態
下絵付け・上絵付けのどちらでも、器本体と装飾の両方の状態が確認されます。上絵付けの器では、絵の具や金彩の残り具合も大切なチェックポイントです。
古陶磁の場合、修理や使用の痕跡も含めて作品の歴史として評価されることがあります。
3. 共箱(ともばこ)などの付属資料
日本の陶磁器でとくに見落とせないのが、共箱をはじめとする付属品でしょう。共箱とは、作品を納める元来の箱に、作者自身が作品名や署名、印などを記したものです。
作者や作品を確認する重要な手がかりとなり、とくに近現代の作家作品では、共箱の有無が評価に影響することがあります。
査定では、箱書きの真偽や、箱と中の作品が対応しているかも確認されます。仕覆(しふく/器を包む布袋)や古文書、極め書きなどの付属資料も、器の来歴を知るための貴重な情報です。
\ WEBでのご相談・ご依頼 受付中 /
簡単WEB査定おわりに

「下絵付け」と「上絵付け」は、釉薬に対する絵柄の位置と、制作工程が異なる技法です。
下絵付けでは釉薬に覆われた奥行きある文様を、上絵付けでは多彩な色や金彩による華やかな装飾を楽しめます。両者を組み合わせた染錦では、二つの美しさが一つの器の上で響き合います。
九谷焼や、柿右衛門窯・マイセン・ロイヤル コペンハーゲンの作品を鑑賞する際も、絵付け技法を意識すると、制作の工夫や職人の技術をより深く味わえるでしょう。
食器棚や蔵に眠っている古い陶磁器も、明るい場所で斜めから光を当て、絵柄と釉薬の重なりを観察してみてください。
私たち日晃堂では、伊万里・有田焼や九谷焼などの日本の陶磁器から、マイセンやロイヤル コペンハーゲンなどの西洋食器まで、幅広く査定を承っています。
ご自宅に伝わる陶磁器の売却や整理をお考えでしたら、骨董品・美術品の専門買取店「日晃堂」へぜひお任せください。
無料のご相談・ご依頼はこちら
\ 日晃堂へのお問合せはお電話がおすすめです /
0120-961-491
陶磁器買取なら、日晃堂にお任せください。
陶磁器買取なら【日晃堂】にお任せください!有田焼や備前焼をはじめ、中国骨董品の唐物陶器や古備前、有名作家の作品など、陶磁器の高価買取には自信があります。無料の出張査定であれば、陶磁器が割れてしまう心配もございません。陶磁器の売却をお考えなら、ぜひ日晃堂までお問い合わせください。
関連記事
-
-
ウェッジウッドのグラスをお買取しました
先日、大阪市のお客様よりお譲りいただいたウェッジウッド ミューズ ワイングラスペアセットです。 クリスタルに繊細なエッチ…
-
-
ティーカップとマグカップの違いは何?それぞれの特徴を解説
「ティーカップとマグカップの違いって何?」「正しい使い分けは?」そんな疑問を抱えている方も多いでしょう。 本記事では、テ…
-
-
バカラの招き猫効果・ご利益は?高級クリスタルの縁起物を解説
「バカラの招き猫とは?」「バカラの招き猫の効果やご利益は?」と疑問を抱えていませんか? 本記事では、バカラの招き猫の概要…
カテゴリーから記事を探す
食器買取に
ついてのご相談・ご依頼はコチラ
丁寧に対応させていただきます。
些細なことでもお気軽にお電話ください。
骨董品・古美術品の相談をする
0120-961-491
LINEやWEBでの依頼・相談も受付中
