元号が明治と改元され、新時代が始まりを告げた1868年、横山大観は現在の茨城県に生まれました。
絵画に興味を持ったのは、東京英語学校に通っていた学生時代。学校の図画教師だった渡辺文三郎に手ほどきを受けました。 その後、絵画への情熱が抑えがたく、1888年に設立されたばかりの東京美術学校に入学します。 受験の前に数ヶ月ほど日本画家・狩野芳崖らに指導を仰いでいたものの、大観の師となったのは美術学校の校長である岡倉天心、そして日本画科で教えていた橋本雅邦でした。

美術学校では、日本画の変革を志していた天心や雅邦の影響を受けつつ、下村観山や西郷孤月、また1期下の菱田春草たちと切磋琢磨しつつ、技術を学びます。 卒業後は仏画の研究をしたり、京都市立美術工芸学校の教師として働いたりといった活動を経て、1896年に母校・東京美術学校の助教授に就任して若い芸術家の卵たちを指導します。 しかし、1898年に校長の岡倉天心が校長の座を罷免されたことを受けて辞職。橋本雅邦や下村観山、西郷孤月たちと呼応して天心のもとで日本美術院を設立します。

急進的な日本画変革運動を推し進める天心のもと、大観は菱田春草とともに「朦朧体」を創出。しかし、「写生を基礎とし、緻密な線描によって事物を表現することこそ日本画の本分である」という暗黙のルールが存在する中、色彩の濃淡によって事物を表現する「朦朧体」は批判の対象となります。 その一方で、日本画のルールが存在しない海外では、朦朧体を駆使した大観や春草の作品が絶賛されました。実際、1900年前後に大観は春草とともにアメリカやロンドン、パリなど欧米の都市を巡って展覧会を開き、大いに歓迎されています。

このような世界的な歓迎ムードを受け、日本の画壇でも大観や春草の作品が受け入れられるようになり、以後の大観は大正・昭和にかけて日本画壇を代表する巨匠として君臨することになります。 1935年には帝国美術院の会員に、1937年には帝国芸術院会員に任命されます。さらに同年、文化勲章を授与されました。そして戦後の1951年、文化功労者に叙せられます。 こうして充実した晩年を送り、1958年に世を去りました。