鄭板橋(ていはんきょう)1693年–1765年
鄭板橋は、清代中国で活躍した書画家です。
本名は鄭燮(ていしょう)。「板橋」と号しました。
正義感の強い官吏として世に出ましたが、汚職にまみれた官の世界を嫌って引退。書画を売って悠々自適の生活を送り、後半生を送りました。書画を販売するにあたっては、あらかじめ料金表を作成するなどして堅実な商法を心がけ、財を成しました。
そんな鄭板橋の特徴は、絵画に書の技法を取り込んだ独特の画風にあります。
漢字を崩して書く「草書」の筆遣いを絵画制作に活用し、流麗でありながらも決して雑味のない、繊細な筆致で作品を仕上げました。特に蘭や竹などを得意としており、作品は高い価値を持ちます。
独自の画風で清廉な作品を残した書画家
1693年、鄭板橋は現在の中国江蘇省に生まれました。
当時の中国には、身分に関わらず学識のある人物を官吏として登用するための「科挙」という制度があり、教育を受けた人は誰しもがこれを夢見ましたが、板橋も例外ではありませんでした。若年の頃から書画に異才を発揮していた板橋は、書画を売って生活費を稼ぎつつ、科挙合格を目指します。
長きにわたる努力が実り、1736年には合格を果たして進士となり、詔勅(皇帝の言葉)を文書化する翰林院に入って書の才能をいかんなく発揮します。 その後、現在の中国江南省において濮陽市范県の県令(知事)をつとめました。 県令としては、官庫を惜しげもなく開いて貧困にあえぐ庶民を支援するなどして慕われましたが、私腹を肥やして汚職に明け暮れる官吏の世界には失望を覚えます。 また、あまりに庶民ばかりを優遇するので富裕層からは疎まれ、結果的に引退することになりました。
その頃、鄭板橋は60歳。 「今後は宮仕えはすまい」と決め、書画と詩作に没頭する生活に入ります。 若い頃と同じように書画を制作しては販売し、生活費を稼ぎました。 官吏時代から書画に堪能なことが知れ渡っていたこともあり、依頼は途切れることがありませんでした。 こうして、1765年に生涯を閉じるまで、鄭板橋は一介の書画家として悠々自適の後半生を送りました。
鄭板橋の代表作
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「遠山煙竹図」
淡くけむる空気の中、葉を茂らせて広がる竹林を描いた作品です。水墨の濃淡で遠近を見事に表現しているほか、幹や葉のなめらかな湾曲を流麗な筆致で表現しています。
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「蘭花竹石図」
のびやかに天を衝く竹と、その足もとに可憐に咲く欄を描いた作品です。 鄭板橋は自然の事物を流麗かつ繊細なタッチで描くことを得意としましたが、この作品はそんな鄭板橋ならではのタッチが活きた代表的な作品といえます。
その他、「黒竹図屏風」などが代表作として知られています。
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