任頤(じんい)・任伯年(じんばくねん) 1840年–1896年
任頤は、字(あざな)は伯年。次遠と号した画家で、清代末期の中国で活躍しました。
上海を拠点に作品を発表する「海上派」のひとりとして知られ、洗練されたモダンな花鳥画、人物画、山水画などさまざまなジャンルの作品を世に送り出しています。シンプルな図柄でありながらもダイナミックな筆致で描かれているのが特徴で、特に晩年に描かれた花鳥画は高い評価を得ています。一方、その人物画は涼やかな気品あふれる仕上がりになっているのが特徴で、こちらも高い価値を誇ります。
風格ある作品で知られる「海上派」の代表的画家
アヘン戦争で中国全土が揺れる1840年、浙江省に任頤は生まれました。 清王朝が力を失いつつあり、国土が疲弊し、やがて内側から崩壊していく激動の時代のさなか、任頤は画家として活動していた父の任声鶴や伯父の任熊、任薫といった人々の薫陶を受けます。 15歳の頃にはすでに見事な作品を書き上げる手腕を誇り、上海で作品を売って儲けることができるようになっていたといいます。
そんな任頤は血気盛んな若者だったこともあり、1851年に起きた「太平天国の乱」に刺激を受けました。そして、キリスト教を掲げて清王朝打倒を目指す太平天国軍が故郷へと駒を進めてきた1861年、彼らに加わって戦いに身を投じます。しかし、太平天国の乱が終結した1864年には故郷に戻り、以後は平穏な芸術生活に身を捧げることになります。 その後は同世代の画家たちと親交を深めながら20代を過ごし、28歳の頃に上海に移り住んで扇子を販売する店を開きつつ作品制作に励み、上海における流行画家のひとりとして名をなします。
中年期に入って以降は、明代末期から清代初期にかけて活躍した八大山人(朱統𨨗)の絵画に大いに影響を受けて画風を変化させ、さらに人気を高めました。 朴訥ながらもユーモラスな側面を持つ八大山人の絵画の影響は、任頤の後期の作品によく見てとれます。
任頤の代表作
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「蘇武牧羊図」
前漢時代の詩人・軍人の蘇武を描いた作品です。
蘇武は漢王朝と対立した遊牧民の一大勢力・匈奴への使者を任されましたが捕虜となり、牧羊をさせられて苦難の時を過ごします。 これは、そのときの蘇武を描いた作品です。 憂いを帯びた表情の蘇武が、不意にカメラを向けられた人のようにこちらをじっと見つめ、その足もとには羊たちがのんびりと佇んでいる……そんな一瞬を切り取っています。 -
「鸚鵡図」
あざやかな羽毛をきらめかせたオウムが木の枝にとまり、ひっそりと佇んでいる姿を風格ある筆遣いで描いています。朴訥とした印象ではありますが、オウムの羽や表情、そしてまわりに見える花びらや葉、枝などが精緻に描写され、独特のムードを生み出しています。 その他、「登高望遠図軸」などが代表作として知られています。
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