佐藤朝山(佐藤玄々)1888年–1963年
佐藤朝山(佐藤玄々)は、大正から昭和にかけて活躍した彫刻家です。
唯一無二の独特の世界観を有する彫刻作品が特徴的で、高い評価を得ました。日本神話や仏教の世界に材をとった作品や、動物の素朴な姿を表現した作品など、手がけた作品は多岐に渡ります。特に神話や仏教をモチーフにした作品は圧倒的な存在感を誇る傑作ぞろいであり、いずれも高い価値を誇ります。
ちなみに本名は清蔵(せいぞう)。若き日に彫刻を学んだ師である山崎朝雲に「朝山(ちょうざん)」という号を授けられたものの、師とは仲違いをして号を返上。のちに玄々(げんげん)と号しました。
独自の道を進んだ孤高の彫刻家
佐藤朝山(佐藤玄々)は、1888年に現在の福島県相馬市に生まれました。 生家が宮大工を営んでいたことから木彫りに親しみ、1905年に世界一の彫刻家を目指して上京。師匠となる山崎朝雲に出会い、技術を学びます。
1910年代に院展で積極的に作品を発表し、1922年には業績が認められて国の費用でフランスへの留学を許されます。フランスでは、ロダンと並ぶ近代彫刻の大家であるアントワーヌ・ブルーデルに学びます。 帰国後は帝国美術院の会員となり、さらに1937年には帝国芸術院の会員となります。 1939年に行われた皇紀2600年を記念する「和気清麻呂像」のコンペに選ばれ、その名を高めましたが、このとき師匠の朝雲と決別。戦後まで本名の佐藤清蔵で活動を続けます。 佐藤玄々の号を名乗ったのは、1948年のことでした。 1949年からは京都の妙心寺塔頭の大心院に住み、晩年まで精力的な活動を続けました。
佐藤朝山の代表作
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「天女像」
“天女”の読みは“まごころ”であり、極彩色の木彫り像として制作されました。美しい天女が圧倒的な色彩の中で神話的な存在感を放っている傑作であり、見る人の胸に感動を呼び起こします。 “まごころ”は日本古来の“大和心(やまとごころ)”を意味する言葉であり、像の豊かな色彩は安土・桃山時代の木彫彩色技術をヒントに完成させたものとなっています。日本の神話時代につながる伝統的な彫刻を現代によみがえらせようとした試みだといわれています。 この作品は現在、東京日本橋の三越本店に展示されています。
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「神狗」
大きく口を開けて吠えている犬の姿を表現した作品です。 ポーズは神社などに見られる「狛犬」ですが、佐藤朝山は“かみいぬ”と呼びました。見る人に畏怖の心を呼び起こす独特の表情が特徴として挙げられます。 この作品は現在、京都市の妙心寺大心院に所蔵されています。
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