江戸時代初期、加賀の地で花開き、わずか50年余りで姿を消したとされる古九谷焼。その希少性と、大胆かつ絢爛豪華な色彩は、日本の陶磁器史において特異な輝きを放ちます。
「古九谷焼はどう見分ける?」
「古九谷焼の特徴が知りたい」
など、古九谷焼の見分け方を知りたい方のために、本記事ではさまざまな情報をまとめました。歴史や特徴、九谷焼との違いなど、古九谷焼について解説いたします。
買取相場や高く評価される理由についても触れているため、ぜひ参考にしてください。
古九谷焼とは?
古九谷焼は日本の陶磁器を代表する焼き物で、江戸時代初期に石川県の加賀地方で作られていました。
まずは、古九谷焼の歴史や九谷焼との違いから古九谷焼について理解を深めましょう。
▼陶磁器についてはこちら
→陶器と磁器の違いとは?【陶磁器の豆知識】
歴史
古九谷焼は、大聖寺藩領内の九谷村で磁器原料が発見されたことを知った大聖寺藩藩主「前田利治」が、金工師の「後藤才次郎」に色絵磁器の製陶を命じたことで発祥したといわれています。
前田利治の命を受けた後藤才次郎は、有田で製陶を学んだ後に九谷村で開窯し、1655年ごろから約50年に渡って名品を生みました。
1700年代初頭に突然閉窯となり、その理由は定かになっていません。
大聖寺藩の財政難や藩主交代による方針変更などさまざまな説がありますが、文献資料が残されておらず、どれも憶測の域を出ていないのが現状です。
古九谷焼の特徴
古九谷焼を含む九谷焼の大きな特徴は、大胆な構図と鮮やかな色使いにあります。絵柄の輪郭がはっきり描かれ、五彩と呼ばれる「赤・黄・緑・紫・紺青」を巧みに使用した華やかなデザインが魅力です。
「黄・緑・紫」の三彩や「黄・緑・紫・紺青」の四彩で描かれているものもあり、共通して豪放な筆致が見られるでしょう。
モチーフは花鳥風月・山水・人物がほとんどで、日本絵画史上最大の派閥といわれ、豪快で力強い濃彩色の作品を残した狩野派の影響を受けているともいわれています。
九谷焼との違い
九谷焼は、古九谷焼を含む石川県南部で作られる焼き物です。古九谷焼が閉窯になったあと、約100年の時を経て再興を見せたものを「再興九谷」といい、古九谷焼と明確に区別されています。
九谷焼は古九谷焼と再興九谷以降の九谷焼を表し、約400年の歴史と伝統を持った焼き物として現在もいくつかの窯で継承されている陶芸です。
古九谷焼の見分け方
・年代
・デザイン
・光沢やゆがみ
古九谷焼か否かを見分けるポイントは、主に年代やデザイン、光沢・ゆがみです。その3つを総評すると古九谷焼かどうかが判断できることがあります。
年代
古九谷焼かどうか判断する基準として、作られた年代は非常に重要です。古九谷焼は、1655年ごろから1700年代初頭のわずか50年あまりに製造されました。
その間に作られたものか、共箱の記載などからわかる場合があり、作られた年代が確認できれば古九谷焼かどうか判断できる可能性があります。
デザイン
前述したとおり、古九谷焼のデザインは花鳥風月・山水・人物モチーフが多く、豪快な線描きや五彩などの鮮明な色彩、ダイナミックな構図などが特徴です。
九谷焼も同じ特徴ですが、古九谷焼のほうがより豪華で勢いもあるといわれています。
光沢やゆがみ
古九谷焼は江戸時代初期に作られた歴史ある焼き物です。その古さによって光沢に独特の柔らかさが見られます。
光沢が強く明瞭な場合は、多くのケースで古九谷焼とは違う焼き物と判断されるでしょう。
また、江戸時代は焼成の技術が未熟だったこともあり、温度にムラができて作品にゆがみが生じることが多くありました。
水平なところに置いてゆがみが見られる場合は、江戸時代の作品の可能性があります。
※古九谷焼か否かは古九谷焼について正しい知識がないと判断も難しいため、買取業者などに査定を依頼する方法が確実です。
古九谷焼の買取相場
古九谷焼の買取相場は、数万円から数十万円といわれています。
300年以上前の焼き物であるため、古九谷焼というだけで高額買取が期待できるでしょう。そのなかでも状態が良好なものは非常に珍しく、価値は格段にアップします。
また、採用されている技法や出来栄えなどによっても買取額は異なり、より色鮮やかで堂々たる構図は高額になりやすいでしょう。
古九谷焼の価値が高い理由
・希少価値
・歴史的・美術価値
・コレクター需要
古九谷焼が高く評価される理由は、上記3つがあげられます。
希少価値
古九谷焼は江戸時代初期に発展した焼き物であり、わずかな期間しか作陶されていません。現存数は極めて限られており、非常に希少価値が高い焼き物です。
そのため、古九谷焼は買取市場で高額買取される傾向にあります。
歴史的・美術的価値
古九谷焼は、日本が歩んだ陶磁器史において肝となる位置にあり、現在の陶芸界にも大きな影響を与えている焼き物です。
その歴史が反映している焼き物として歴史的価値が高く、陶磁器の重要な資料としても扱われています。
また、独自の様式や技法によって卓越した作品が多く、美術的価値が評価されている点も価値が高い所以です。
コレクター需要
希少性や芸術性が高い古九谷焼は、多くのコレクターに注目されています。コレクターズアイテムとして高い需要が見込まれる焼き物であることも、買取額が向上する理由です。
古九谷焼の種類
・色絵古九谷
・青手古九谷
・藍九谷
・吸坂手
古九谷焼の代表的な種類には、大きく分けて上記4つがあげられます。
色絵古九谷
色絵古九谷は古九谷焼のなかで最も代表的で、白磁の上に鮮やかな色絵を用いて豪華に彩られているのが特徴です。
五彩(赤・黄・緑・紫・紺青)や五彩のいくつかが使用され、円形・四方形・長四方形・扇形・菱形・八角形などさまざまな形の皿がバラエティ豊かに製造されたといわれています。
青手古九谷
青手古九谷は緑の色釉で表面を塗り詰め、赤を使わずに絵付けされた古九谷焼です。
ほとんどが丸い皿型で、古九谷のなかでも独特な雰囲気を持つといわれています。シンプルな形とはうってかわり、油絵のような重厚感や力強さが印象的です。
また、絵にも高い画力が感じられ、職人ではなく絵師が絵付けしていたといわれています。
藍九谷
藍九谷は、白地の磁器に呉須(ごす)という藍色の顔料で絵付けした古九谷焼です。呉須の濃淡を巧みに使い分け、青一色で柄が表現されています。
華やかな色絵古九谷とは異なり、落ち着きのある上品な雰囲気が特徴です。
吸坂手
吸坂手は、鉄分を多く含み焼成時に茶色や褐色に発色する「錆釉」が器全体にかけられた古九谷焼です。
褐色の美しさをそのままにした無地のものや、その上から絵が施されたものなどがあります。
古九谷焼に見られる裏印
陶芸品には、作品の底に裏印と呼ばれる刻印の見られるものがあります。裏印は、文字や形などから製作時期や作家がわかることがあり、価値を調べる際に重要視される要素です。
古九谷焼には「福」の字を二重の四角で囲った「角福」と呼ばれるものなどが見られることがあります。
古九谷焼が作られていた時代は裏印の概念が確立していなかったこともあり、裏印がない作品も多数存在するため、裏印がないからといって「古九谷焼ではない」と判断するのは早合点です。
裏印は参考程度に考え、判断は買取業者に任せましょう。
古九谷伊万里論争
古九谷焼は、石川県加賀市で焼かれたものであるという説と、佐賀県の有田で焼かれた伊万里焼の一種だとの説があり、現在も決着のつかない論争が継続中です。
有田の窯跡から古九谷焼に見られる色絵磁器の陶片が多数出土したことや、古九谷焼の絵具成分が伊万里焼に酷似していたことなどから、伊万里焼の一様式であることが有力視されています。
一方で、伊万里焼の様式が九谷村でも試された可能性も否定できません。石川県では古九谷焼がブランド化しており、重要な文化遺産として扱われています。
そういった背景もあり、現在でも多角的な視点で研究が続けられています。
▼伊万里焼についてはこちら
→古伊万里の特徴や見分け方を解説!伊万里との違いや買取相場も紹介
おわりに
古九谷焼は江戸時代初期に石川県の加賀地方で作られた焼き物で、大胆な線描きや五彩と呼ばれる赤・黄・緑・紫・紺青を巧みに使用した華やかなデザインが特徴です。
約50年という短い期間しか作られておらず、希少価値が高い焼き物として高額取引される可能性があります。
歴史的価値や美術的価値が高く評価され、コレクター需要が高いことなども、古九谷焼が注目されている理由です。
古九谷焼は、作られた年代や色彩豊かで豪快な絵柄、光沢やゆがみなどから見分けられることがありますが、古九谷焼にはいろいろあり「藍九谷」や「吸坂手」など落ち着いた柄も存在しています。そのため、見極めは買取業者などで査定してもらう方法が確実でしょう。
日晃堂は、古九谷焼をはじめさまざまな陶芸品に対応してきた実績があります。古九谷焼に精通した査定士が在籍しているため、古九谷焼かどうかの判断も含めた適正な査定が可能です。
古九谷焼の買取や査定は、日晃堂にお任せください。
▼無料の査定依頼はこちら
→今すぐ「古九谷焼」をメールで無料査定
※記事内に掲載している買取価格は参考価格となり、買取価格を保証するものではございません。同様の作品であっても査定時の相場や作品状態などによって買取価格は変動いたします。