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南城一夫の代表作 パリ留学中に描かれ、帰国後も深く愛好して長らく自宅に置いていたという『鯛の静物』こそ、彼の代表作として挙げるにふさわしい作品といえるでしょう。 「テーブルに置かれた縁起物の鯛と、野菜が少々」という素朴な題材であり、ユーモラスな趣のある作品ではありますが、絵画の画面構成には一切の隙がありません。 それでいて窮屈なところがなく、のびやかに筆が運ばれていることがうかがえます。
描き上げたとき、南城はこう漏らしたといわれています。 「これこそが僕の絵だ。とうとう僕にも絵が描けた！」 画家の生涯は、「お絵描きが好き」という素朴な想いから出発しますが、真の芸術家でありたいとするならば“自分の絵”を見つけることが欠かせません。 まさしく、南城はこの絵を描いたときに芸術家へと脱皮を遂げたのであり、絶頂期を迎えたのです。
そんな代表作『鯛の静物』は、紆余曲折あったあと1981年に群馬県立美術館に買い取られ、現在に至ります。