内藤伸(ないとうしん)1882年–1967年
内藤伸は、明治から大正、昭和にかけて活躍した彫刻家です。
木彫りを得意としており、特に古典彫刻の技法を積極的に取り入れた作風で知られました。気迫を込めて彫刻刀を入れ、荒々しくダイナミックなフォルムに仕上げるという「気刀彫り」という技法を編み出し、それを駆使した傑作を数多く残しています。見る人の胸を打つ感動的な作品の数々は、現代においても高い価値を誇ります。
気迫を込めた「気刀彫り」を確立した彫刻家
1882年、内藤伸は島根県に生まれました。
彫刻家を志して上京し、高村光雲に師事して学びます。光雲が教鞭をとっていた東京美術学校(現在の東京藝術大学)を卒業したあとは、主に文展や院展で活躍。1919年に院展を離れたあとは、1920年に帝展(文展から改称)の審査委員を務めたことをきっかけに、帝展1本にしぼって作品を発表します。その後、新文展、日展と名称が変わる中、出品を続けていずれも高い評価を得ました。
そんな内藤伸は、作品を制作するかたわら、古典的な木彫りの技法を研究し、後進の育成にあたるなど、彫刻の発展に力を尽くした人物でもあります。 1929年からは日本木彫会を主催して、木彫りの発展に寄与しています。また、荒々しくダイナミックな作品に仕上げる「気刀彫り」という技法を編み出したり、作品に彩色を施すなどして新風を吹き込むことに熱意を傾けました。 晩年は長く病気を患って活躍の機会をなかなか持てないままでしたが、その技法や思想は着実に次代に受け継がれ、現在も脈々と続いています。
内藤伸の代表作
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「獅子」
島根県立美術館に所蔵されている木彫りの作品で、タイトル通り獅子の姿をかたどっています。4つの足で大地を踏みしめ、尾を雄々しく逆立てて吠え声を上げている姿が迫力たっぷりに表現されています。 荒削りのようなパワフルな雰囲気が特徴ですが、これは内藤伸ならではの「気刀彫り」という技法を活かしたもの。気力を込めて彫刻刀を入れていくことで、畏怖の念を起こさせるほどの迫力ある作品に仕上がっています。
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「子安観音像」
島根県雲南市の吉田公園にある子安観音堂に安置されている像です。 崇高な雰囲気をたたえつつも慈愛に満ちた表情を見せる観音様の姿を表現しているのが特徴ですが、これは内藤伸による「子どもたちの健やかな成長を願う心」が反映しているといいます。 吉田公園では毎年5月、子どもたちの稚児行列が練り歩く子安観音祭が開催されており、観音像は子どもたちの成長を優しい目で見守り続けています。
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